東大法学部で挫折しジャーナリストになった僕の「人生最高の10冊」

世の中を良くしたくて法学部に進学したが…

僕は札幌市内で生まれましたが、父親が地元企業の転勤族だったため、子供の頃は北海道内での引っ越しを繰り返しました。引っ越し先でようやく友だちが出来ると、すぐに別の土地へ。そんな家庭環境もあって、一人で楽しめる読書が早くから好きになりました。

小学5年生のとき夢中になって読んだのが、『ナルニア国ものがたり』。イギリス人作家C・S・ルイスが書いた冒険譚で、抜群に面白いのですが、「正義とは何か」など、哲学的なことも考えさせられました。

あとで知ったのですが、ルイスはオックスフォード大学出身の高名な英文学者で、神学者、哲学者でもあった。物語にもキリスト教の哲学が色濃く反映されていました。

札幌北高に通っている頃に出会った本が、庄司薫さんの『赤頭巾ちゃん気をつけて』。主人公の高校生・薫は東大を目指していましたが、学園紛争が激化し、受験するはずだった'69年の入試が中止になってしまう。結局、薫は大学そのものへ行かないことを決めます。

その決断の背景として、学生運動に熱中する大学生に対する薫の違和感や、高名な東大の政治学者への反発心が描かれます。ところが、僕はこの本を読んで、「東大へ行こう」と決めたんです。というのも、作中で東大に通う薫の兄たちが、こんな言葉を口にするんですね。

「東大法学部とは、人を幸福にするためには、何をすれば良いのかを考えるところ」だと。

照れくさい話ですが、当時の僕はこれを読んで素直に「それなら自分も官僚か弁護士になって、世の中を少しでも良くしたい」と考えたんです。

その計画を実行に移すため法学部に進んだものの、僕には向いていなかった。一番興味を抱いた授業は『根拠よりの挑戦 ギリシア哲学究攻』を書いた井上忠教授の哲学。哲学の単位は1年生で取得しましたが、授業は4年間聴き続けました。

一方で肝心の法学には嫌悪感を持つようになってしまいました。法律はあくまで人間がつくったルール。法律で罰せられる行為が、哲学的な「絶対悪」とは限らない。法学部に息苦しさを感じ、井上先生に「哲学者になりたい」と相談しました。

でも、先生は「ジャーナリズムの世界に行ったら」とおっしゃった。哲学は頭の悪い僕には難しすぎると思ったのかもしれないですね(笑)。

卒業後は、先生の言葉もあって、郷里の札幌テレビ放送へ入社。社会福祉をテーマにした地元ローカルの情報番組で、とくに障害のある方の支援に力を入れました。

社会的に「弱者」と呼ばれる人々の問題には学生時代から関心を抱いていました。僕は引きこもりがちで、自分の内面を見れば弱さに満ちている。誰もが弱者であり、助け合って生きていくものではないかと思ったんです。