大統領選 アメリカ
アメリカ大統領選の結果を左右するFRBの「次の一手」
〔PHOTO〕gettyimages

FRBの利上げ見送りと大統領選の関係

いかにも「申年(騒ぐ年)」らしく、1月から大荒れの展開だった今年のマーケットだが、このところはやや落ち着きを取り戻しつつある。この落ち着きをもたらしている最も重要な要因は、アメリカの金融政策スタンスの変化であると考える。

FRBは昨年12月に利上げに踏み切った。リーマンショック以降、識者の間では「アングロサクソン型の資本主義の限界」などがささやかれてきたが、結局、主要国の中で景気回復で先行し、最初に利上げを実現させたのはアメリカであった。

そのFRBだが、2月までは、「できるだけ早い時期に『伝統的な金融政策(すなわち金利政策)』に戻りたい」という意識が強く、段階的な利上げ実施に積極的であったと思われる。だが、3月のFOMC(連邦公開市場委員会)では、世界経済の減速や金融市場の不安定性を理由に利上げを見送り、年末のFFレート見通しの中心値は1.4%から0.9%へ引き下げられた。

現在のFFレートは0.35%前後なので、FRBが想定する今年の利上げは2回程度となったことを意味する(昨年12月時点では、4回程度の利上げを想定)。FRBのタカ派的なスタンスは後退した。

現在、アメリカは大統領選のさなかであるが、民主、共和両陣営とも、「票田」としての産業界の意向を意識してか、「ドル高の抑制」を明確に打ち出してきている。実際に、現在のアメリカ経済を見ると、製造業はドル高の影響で景況観が明らかに悪化している。FRBによる利上げは、ドル高促進要因であるため、選挙を意識する両陣営が利上げに反対するのは、ある意味当然ではある。

また、アメリカ経済を牽引しているのは自動車や住宅といった家計による耐久財の購入だが、ここにもピーク感が出始めている。こうした支出は、通常、ローンを組んで行われることが多いからだ。

今後、FRBが利上げを進めていくとすれば、ローン金利の上昇が見込まれるので、自動車販売や住宅投資も減速していく懸念がある。FRBが強引に利上げを進めることで米国全体の景気が減速することになれば、それが大統領選の結果を左右する(特に、政権与党である民主党にとって不利になる)事態も否定できなくなってきた。

米国議会には、リーマンショック後、FRBの金融政策が貧富の格差を助長させてきたとの批判が根強く残っている。FRBの独立性を脅かすような「改革案」が提出されるような動きもあった。

このような状況を考えると、FRBは、無意味な誤解を政治家に与えることを避け、政治的な中立や政治からの独立性を維持するために、大統領選が終了するまで、利上げを回避してもおかしくはない状況である。

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