スゴ本の広場
2016年03月26日(土) 酒井順子

「子の無い人生」をどう生きる?
酒井順子が問う、未産女性の今とこれから

『負け犬の遠吠え』から12年

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〔photo〕iStock

30代は、既婚女性と未婚女性の間に大きな壁がありました。結婚していなければ単なる「負け犬」……と思っていた酒井順子さんは、40代になり悟ります。人生を左右するのは「結婚しているか、いないか」ではない、「子供がいるか、いないか」なんだと……。話題の新著『子の無い人生』より「はじめに」を特別公開!
 

『負け犬の遠吠え』から12年

負け犬の遠吠え』(講談社)という本を出した時、様々な反響が寄せられた中で、意外に多かったのが、

「私は結婚しているのですが、子供はいません。こんな私は、負け犬なのでしょうか?」

というものでした。

私はこの本の中で、「未婚、子ナシ、三十代以上」の人を、負け犬と定義しました。ですから、「子供がいようがいまいが、結婚しているなら勝ち犬に決まっているじゃないの」と、その手の質問に対して思っていたのですが、今考えるとわかります。「結婚しているが子供はいない」という状況に、いかにその人達が〝負け感〟を抱いていたかということが。

私は当時、結婚さえしてしまえば、人は「宿題は終わった」という気分になるのだろうと思っていたのです。しかしどうやらそうではないらしく、結婚した人には「子供はまだ?」というプレッシャーがかかる。一人目を産んだなら、「二人目は?」というプレッシャー。二人以上の子を持って初めて、結婚は完成したと見なされるらしいのです。

こういったプレッシャーは、既婚者をうんざりさせるものでしょう。が、もしもその手の外圧が無くなったら、日本の出生率はどこまでも下がっていくであろうことを考えれば、意外に重要な「声かけ」なのかも。

このように、「子供は婚姻関係にある男女間で作るもの」という認識がある日本では、純粋独身者である私のような者は「結婚はしないの?」とは聞かれても、「子供はまだ?」とは聞かれません。四十歳が見えてきて、「そろそろ妊娠もラストチャンス」となると、

「子供だけ産んでおくっていうのも、いいかもよ?」

といったことは言われたものの、それは半ば冗談のような口調でした。

対して、結婚していても子供がいない人は、

「お子さんは?」

と、しょっちゅう聞かれるのです。それも、「期待しているわよぅ」と、善意に満ちた顔で。完全な結婚をしている人、すなわち配偶者と二人以上の子供を得ている人にとって、「既婚子ナシ」というのは、もしかしたら純粋独身者よりも不自然な状態として映るようなのです。

子ナシ既婚者が、

「こんな私は負け犬でしょうか?」

と問う目は、今思い返すと切実な光を湛(たた)えていました。彼女達はおそらく、

「既婚者とはいえ、あなたも負け犬の仲間ですよ。仲良くしましょう」

と、言ってほしかったのです。

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