「アメリカの真の支配者」コーク一族がトランプの暴走を静観する理由

2016年03月24日(木) 古村治彦

古村治彦賢者の知恵

upperline

なぜコーク一族は動かないのか

拙訳『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著)が注目を集めたこともあってか、このところ、日本のメディアでもコーク兄弟の動向が報道される機会が多くなった。

大統領選の趨勢を決めるとまで言われるほどの影響力をもつコーク兄弟だが、これまで、大統領選挙についてはずっと静観してきた(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47846)。トランプやクルーズの発言を新聞紙上で批判したことはあったが、具体的に誰を支持するかを表明していない。

そして、共和党の大口献金者であるコーク兄弟は、共和党エスタブリッシュメントとはまったく異なる動きをしている。2016年3月3日付のロイター通信は<大富豪コーク兄弟、予備選からのトランプ氏追い落としに動かず>と報じた。記事によると、コーク兄弟がスポンサーとなっている政治組織「フリーダム・パートナーズ」の代表が、コーク兄弟が大統領選挙に関与する計画はない、と述べたということだ。

前回の論稿でもご紹介したように、トランプはコーク兄弟を批判しており、一方でチャールズ・コークはトランプの言動を批判している。また、コーク兄弟がまとめ役をしている大口献金者ネットワークの人々は、今年2月の段階でトランプ阻止のために動き出している。それなのに、コーク兄弟が自分自身の資金をトランプ阻止のために使わないと表明したことは、「消極的ではあるがトランプを支持する」と表明したようなものだ。

また、コーク兄弟の兄でコーク・インダストリーズの総帥チャールズ・コークは、今年2月18日付『ワシントン・ポスト』紙の論説ページに寄稿し、民主党候補のバーニー・サンダースと自分は、大企業への補助金に反対では一致しているとし、「この点ではサンダースは正しい」と書いた。

サンダースはアメリカの輸出入銀行の資金の75%が大企業保護に使われていると批判しているが、前述の政治組織「フリーダム・パートナーズ」が制作したテレビコマーシャルの中では「バーニー・サンダースは輸出入銀行について正しいことを言っている」とのキャプションが流れ、サンダース発言を支持する旨が示されたのだ。

アメリカのメディアは、これを「イデオロギー的に正反対であるはずの両者が一致するという奇妙な光景」と報じている。

アメリカ屈指の大企業であるコーク・インダストリーズを経営しているコーク兄弟が大企業に対する補助金に反対しているのは、彼らが信奉しているリバータリアニズムという思想が関係している。

詳しくは拙著をお読みいただきたいが、リバータリアニズムとは、個人の自由と市場を尊重するというもので、補助金がなければ倒産してしまうような企業を助けることや、補助金によって公正な競争がゆがめられることに反対、という立場になる。

コーク兄弟は、他の大富豪たちとは違ってトランプ阻止に動かず、そして敵方であるサンダースを褒めるという、一見すると奇妙な動きをしている。一体なぜか。

次ページ トランプを利用する?
前へ 1 2 3 4 次へ

このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
関連記事


underline
アクセスランキング
1時間
24時間
トレンドウォッチ