現代新書

海外企業のほうが必死に学んでいる「トヨタ」の強さの秘密

日本人が知らない日本最大のグローバル企業
酒井 崇男 プロフィール

トヨタの系列は儲かっている

Q:系列との関係についても触れられていますが、一般のイメージとだいぶ違いますね?

酒井 ええ。私は もともと三河地方で育ったので子供の頃から系列がどういう仕組みで儲けるかというメカニズムを知っています。遊んでいた近所の友達の親は全員なんらかのレベルでトヨタ関係の会社で働いていたからです。三河の系列企業は東京でのそれと違い、ボロ儲けです。仕組みとしては全く違うものだと言えます。

しかし誰もが、少し考えてみればわかると思うのです。

たとえば、トヨタの「定期値下げ」なんかで、トヨタに、たたかれていて苦しいはずのデンソーの売上はいまでは、4兆3000億円となり、(デンソーは)NEC系列全体や三菱重工よりもすでに規模の大きな会社となっています。もちろん、完成車メーカーのマツダ・スズキ・三菱・富士重工よりも1兆円以上売上が多い。

なぜデンソーがこんなに儲けられるか、本当の仕組みを、日本人もいい加減理解した方がよいと思います。いまでは、フォードやGMのサプライヤーもトヨタとつきあいたいのです。理由は簡単で儲かるからです。ではなぜ儲かるのか? その理由を本書で書きました。

デンソーは4兆円以上の売上、アイシンは2兆円以上、いずれも世界的な企業です。どちらも別段他社より、飛び抜けて優秀な人材ばかりが最初から入社しているか、と言われると、平均すればNECや三菱重工と大差ありません。でもこの結果の違いはどこから生まれるか? アタマを使って考えてみてください。

よくメディアが「トヨタと言えば下請けいじめ」のような記事を書いていますが、私が子供時代から実際に見てきた光景は、およそそうしたことからかけ離れたものです。

単に体質の古いメディア企業自身がそういう搾取型の経済構造になっているので、同じ日本企業であるトヨタ系列もそうなっているだろう、と勝手に考えているだけなのではないでしょうか。現地現物で取材をしていれば全く違う見方になるはずです。

実際とある新聞社で「下請けいじめ」記事を書いていた知り合いの記者は、いじめられているはずの下請け企業の人達が毎年取材するたびに自分よりも豊かな生活水準になっている様子をみて、これでは記事にならないと言っていました。

もっともおなじ系列でも現実は、たとえばトヨタ系との系列と、NTTや日立の系列では、同じ大企業でも内部で行われていることは質的に全く別物と言えます。

最近トヨタは日立やNTTのような古い会社の悪影響を受けているという話も聞こえていますが、原則として、トヨタ系はNTTや日立系列のような搾取型構造にならないようにしています。形態(カタチ)は同じでも、人間系を含めて中で行われていることは別物と言えるでしょうね。このあたりの解説は今回の本では全部書いてはいませんが、また機会があれば具体的に解説することもできるでしょう。

系列システムの質の違いは、トヨタに対して、日立もNTTの系列企業がちっとも規模的に成長できていないことからもわかるでしょう。