【実名公開】高浜原発「止めようとした裁判官」「動かそうとした裁判官」選んだのは「国民の生命」か「自分の出世」か

2016年03月29日(火) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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山本氏と同じように、原発差し止めの仮処分を決定した裁判官がいる。

'14年に大飯原発、'15年に高浜原発の再稼働差し止めを決めた福井地裁(当時)の樋口英明裁判長(63歳)だ。福井在住のジャーナリストが、樋口氏を評して言う。

「樋口さんは法律に対して極めて厳格な、昔気質の裁判官というタイプ。仕事に誇りを持っていて、相手が誰であっても信念を曲げない人だという印象です」

国民の生命を最優先に考える裁判官がいることは、安心できる。だが、事態はまだ流動的だ。翌10日、関西電力は原発を停止させる一方、11日以降に仮処分に異議を申し立てる方針を示した。

そもそも高浜原発には、樋口氏の仮処分命令に対して関電から取り消しを求める申し立てがあり、昨年末に同じ福井地裁で仮処分取り消しが決定していた。一度止めると決まった原発を「もう一度動かす」判断を下した裁判官がいたのである。

その判断を下したのが、樋口氏と入れ替わりに福井地裁へ着任した林潤裁判長(46歳)、山口敦士裁判官(39歳)、中村修輔裁判官(37歳)という、法曹界でも超エリートと言われる3名の裁判官だ。

実は、福井地裁にこうしてエリートが揃うのは、異例のこと。元裁判官の現役弁護士が、こう語る。

「本来、福井地裁は名古屋高裁管内でも比較的ヒマな裁判所で、アブラの乗った裁判官が来るところではない。しかも、この3人は東京や大阪など、他の高裁管内からの異動で、この人事には、各裁判所の人事権を握る最高裁の意向が反映されていると見るべきです」

前出の、「原発を止めようとした」山本・樋口両裁判官と違い、「動かそうとした」裁判官3人の経歴には共通点がある。それは、全国の裁判所と裁判官の管理、運営、人事までを仕切る最高裁判所事務総局での勤務経験があることだ。

「最高裁事務総局といえば、ゆくゆくは最高裁判事や、全国の裁判官と裁判所職員を含めた人々のトップとなる最高裁長官を狙えるようなエリートが集まるところ。彼ら3名は、全国の裁判官の中でも選り抜きの、いわば『将来を約束された』人々だと言えるでしょう」(明治大学政治経済学部教授の西川伸一氏)

凄い早さで出世中

裁判長を務める林氏は、'97年に任官して2年で事務総局の民事局へ異動。その後は、一度宮崎地裁で判事補を務めた以外、東京・大阪・福岡と都市圏の高裁と地裁の裁判官を歴任している。

「任官して初の赴任地が東京地裁という点で、人事権を握っている事務総局から、目をかけてもらっていることが窺えます。その上、初任明けと呼ばれる2ヵ所目の赴任地が事務総局。これは、林裁判官の同期108人の中でも6名しかいません。実際、任官から18年で部総括判事の役職に就くのもかなり早い出世です」(西川氏)

判事補の中村氏は、任官から福井地裁に着任するまでの9年間を東京、横浜、大阪で過ごした。

「通常、若手の裁判官は少なくとも一度、北海道や九州などの遠隔地へ赴任させられます。しかし、そうしたこともなく事務総局総務局付という、国会対策などを担当する部署に登用された。初任地も大阪ですし、エリートコースと言って差し支えないでしょう」(西川氏)

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