ゴルフ
A・パーマーの名誉スターター辞退に想う、時代の「区切り」
マスターズ開幕前のビッグニュース
一昨年のパーマー招待、開幕前の会見にて 〔PHOTO〕Jun Hiraoka

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

マスターズ初日の1番ティ

アーノルド・パーマーの“決断”が米ゴルフ界で話題になっている。

86歳になるパーマーは、来たる4月のマスターズ初日の朝、1番ティでオナラリー・スターターを務めることを「辞退したい」と発表した。

その理由は、重篤な病気とか、怪我とか、そういうことではなく、老齢になったパーマー自身が「そうすべき」と感じたからだった。

「(マスターズ委員会の)ビリー・ペイン会長に電話して、オナラリー・スターターの務めから引退したいという意志を伝えた。会長は、私がティショットを打たないことを残念がってくれたけど、私がその場に出席だけはしようと思っていることを喜んでくれた。

今年のマスターズは、まずチャンピオンズ・ディナーに出席し、木曜日の朝はジャック・ニクラスとゲーリー・プレーヤーがスターターとしてティショットを打つ姿を眺めたい」

初日の朝、1番ティで「キング」の姿を見ることはできそうだが、実際にティショットを打つのはニクラスとプレーヤーのみ。「ビッグ3」が揃ってティショットを打つマスターズの始球式は、もう見ることができない。その決断はパーマー自身にとっても断腸の思いだったようだ。

今週はお膝元のベイヒル(フロリダ州)でアーノルド・パーマー招待が開催されているが、パーマーは恒例の開幕前の会見は行なわず、あらかじめスタッフが行なった一問一答がメディアに配布された。その中で、マスターズのオナラリー・スターター辞退について、パーマーはこう語っていた。

「残念に感じているかって? そりゃ、もちろん残念だよ。でも、私は2004年にマスターズにプレーヤーとして出ることを止め、去年はパー3コンテストに出ることを止めた。今年はこのセレモニーでの役割に終止符を打つ番だ。

永遠に務めることができたらいいなとは思う。でも、思うように球を打つ力が、もはや私の体には備わっていない。だから、もう、眺めるだけにしなければならない」

毎年、この会見で聞いていたパーマーの優しい声を今年は聞くことができなかった。昨年は早朝にパジャマ姿で犬の散歩をしていたパーマーと遭遇し、「グッドモーニング!」と声をかけてもらったが、今年はキングのそんな素顔を見ることはできそうもない。

本人の姿がないまま、配布された一問一答をなぞっていると、どこからともなく、淋しそうなキングの声が聞こえるような錯覚に陥った。