折口信夫『死者の書』のマンガ化で話題! 漫画家・近藤ようこの「わが人生最高の10冊」

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神話学から民俗学へ

一番にあげた『たなばた』は、織姫と彦星の話。幼児向けなのに絵がエロティックなんですよ。

牛飼いの若者が天の川で水浴びをしている織姫を見初め、着物を隠してしまう。それがきっかけで結婚し、子供も生まれたのに神様に仲を引き裂かれる。ふたりが遊んでばかりで働かなくなったというのが一般に知られている話ですが、この絵本は神様が仲のよさを羨んで意地悪をするというのが違っています。

そんなに絵本を読まずにきたのですが、色合いがとても上品で子供の頃はよく見返していました。

今回あげた順位は読んだ年代順です。『古事記』は小学生の頃、子供向けにアレンジされたものを読んだのが最初です。出てくる神様が人間臭いのと、古文のリズムが自分にあっていたのでしょうね。高校生になって文庫本の『古事記』を再読したときには夢中になって読みふけりました。

『古事記』や『日本書紀』は、天皇家が豪族氏族を束ねていく中で集めた各地の神話を編んだもの。神話の管理が政治的な行為だったわけですが、そこまで考えなくても読み物として面白い。好きがこうじて『恋スル古事記』という漫画も描きました。

高校時代に読み漁っていたのが神話学。そこから民俗学へ向かうんですが、民俗学は大きく柳田(國男)学と折口(信夫)学に分かれていて、私が夢中になったのは折口信夫のほうです。

興味をもったきっかけは、歴史学の上田正昭先生の本に「柳田学は人の幸福に目を向けようとするのに対し、折口学は不幸に目を向ける民俗学だ」という趣旨の一文が書かれていたこと。

「幸福」って、どこかぼんやりしているけれど、「不幸」ははっきりしているでしょう。それに、折口学は柳田学が捨ててきた死やセックスを拾いあげていたのも惹かれた理由でした。