現代新書

日本人が意外と知らない!?  「トヨタ」が最強であり続ける本当の理由

酒井 崇男 プロフィール

低コスト化技術の追求

Q:設計者がデザインや機能を設計するというのは、一般的にも当然のことだと思いますが、原価を下げる(原価低減)ことも、設計の段階でほとんどが考えられているという部分はかなり驚く読者が多いのではないでしょうか?

酒井 本来の意味での設計者の仕事とは、消費者、つまり買い手のニーズを満たしている度合いを高めて、実際に買い手が買う商品を生み出すことです。買い手は設計者が意図した価値を買うわけですから当然です。

いまの企業競争とは、ざっくり言えば、「消費者が持つニーズと商品の価値の適合度が上がるような設計情報を経済的に作り出す」分野で競争していると言えます。そのための有力な手段が技術開発です。

つまり、商品性(価値)を上げるために技術開発をすることはもちろんですが、トヨタでは「低コスト化技術の開発」を積極的に行ってきています。

たとえば、現在市販されているミライのような燃料電池車は、原理そのものや技術そのものは10年も前には確立されています。ただとてもでないが普通の家庭の収入で量産車が買える値段では実現できていなかった。つまり、研究室でできた、ということと、実用化されて、実際にわれわれが普通に買える値段の「商品」になっている、ということはまったく別物なのはいうまでもありません。

ミライの場合も(まだ少し値段は高いですが)普通の人が買えるレベルの燃料電池車になるために、トヨタでは、「低コスト化技術の開発」を行ってきているということなのです。

燃料電池車ミライ〔photo〕gettyimages

また、「自由度」ということを考えれば、前工程(企画・設計)で価値も原価も決まってしまうのは誰でもわかるのではないでしょうか。後工程、たとえば工場で量産段階でなった段階で、大幅な設計変更をして原価を下げることは不可能です。

たとえば、家族が喜ぶおいしいカレーを作ると決めて材料を買って下ごしらえをして最後に煮込んでいる最中に突然、俺たちは今日はカレーは食べたくないから肉じゃがにしたいと言われてももう変更できません。カレー粉は高いからカレー粉を使わないカレーにしてくれと言われても困ります。

ものつくりにかかわらずどんな事柄でもそうですが、後工程で何か変更をする場合には自由度はどんどんなくなる。

価値もそうですが、原価も同じです。何を作るか、つまり企画や設計段階で、可能な限りの情報を集めると同時に優秀な人材を投入して、ほとんどを決めるわけです。後工程でももちろん原価は下がりますが、現実問題可能なのは2~3%でしょう。