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日本人が意外と知らない!?  「トヨタ」が最強であり続ける本当の理由

酒井 崇男 プロフィール

その秘密はじつは昔からTPD (Toyota Product Development:トヨタ流製品開発) にあります。トヨタの強さは昔からTPDにあって半世紀以上その事実は変わっていません。TPSに加えてTPDも圧倒的に強いということです。

TPDとは、1953年に当時常務取締役だった豊田英二氏と元航空技術者の長谷川龍雄さんがはじめた、主査制度にもとづく製品開発のことです。

ではなぜ、肝心のTPDはあまり一般的に知られていないのか?

それは、TPDはTPSに比べると、少し説明が難しかったこともあります。TPDは、TPSのような工場の話と違って目に見える話ではないですし、知識集約型である。

そのため理解するためには、新しい価値を生み出したり、原価を下げたりするために技術的な知識やトヨタ流の設計という概念を理解したりしないといけなくなってきます。従来は、あまり一般の人向けに説明するものではなかった。

研究者でも、社会学系のものつくり分野の学者になるとTPDの話を正確に理解している人は日米ともに皆無です。技術や設計、経済性の知識がないと、人にわかるように説明するのが、少し難しい。一言で言うと、ちょっと込み入った話になるということです。

そこで、TPDは伝えるのが難しいということで、わかっている人がわかっていればいい、知っていればいい人が知っていればいい、という種類のものだったのではないでしょうか。 

そのためかも知れませんが、世間でTPSばかりが有名になってしまってTPDはほとんど知られていない。

製品開発の段階で利益のほとんどは決まる

しかし、トヨタはむかしから、元々ざっくり言えば、「TPD + TPS」の会社です。「売れるモノを売れるとき売れる数だけ売れる順番に作る」といったとき、「売れるモノ」を作るのがTPDつまり製品開発の役割で、「売れるとき売れる数だけ売れる順番に作る」のが工場のTPSの役割です。

歴史的には、TPDの価値や利益に対する貢献度は年々増えて、1970年頃にはTPDとTPSの利益貢献度は逆転し、現在は価値も利益もほぼすべてはTPDで生み出されるようになっています。

つまり、

「消費者が買う商品性(価値)を消費者が実際に買う、あるいは買える価格でありながら、会社にとっては十分な利益を出せる原価構造」

のほぼすべては、現在ではTPDで生み出されています。

だからと言って、TPSが不要になったとかいう話ではなくて、もともとTPDとTPSはトータルの組み合わせで相乗効果を出すための仕組みなのです。でもすでに述べたようにTPSは世界の常識となっているのでそこだけで競争する時代は終わったということです。

TPSが世界で知られるようになったのは、トヨタが系列企業向けにTPSを広める目的があったり、TPSの発案者の大野耐一さんが、ダイヤモンド社から1978年に『トヨタ生産方式』という本を出したこともあるのでしょう。

また、日米でトヨタ研究をした研究者らが、社会学系の学者だったために、彼らでも理解できる、工場での生産の話をもっぱら展開したことも理由としてあるかも知れませんね。

大学関係では、TPDについてきちんと書かれた本は全くといってよいほどありません。でもいまは、実業の世界ではそこで勝負しているのですよね。