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視力2.5!驚異の身体能力と集中力~オコエ瑠偉の快進撃が止まらない
東北楽天のゴールデンルーキー
週刊現代 プロフィール

センターからサインが見える

視力には、もともと定評がある。昨年秋、ドラフト会議直前のTV局の企画で、オコエは一般的な視力検査で2.0を記録。さらに、視力表から立つ位置の距離を2倍遠くしても、1.2の視標を正確にいい当て、「視力2.4」を超えると判定された。

「センターの守備位置から、(約100m前方で構える)捕手が笑っている表情が見える」と明かすほど、視力は優れている。昨年夏の甲子園でベスト4まで進出した関東一高のオコエを取材した、アマチュア野球担当記者が振り返る。

「目がよくなければできないプレーがありました。3回戦の中京大中京戦です。一回二死満塁のピンチで、先制点をやるまいと、前進守備を敷いていたオコエは、左中間の最深部に飛んだ大飛球を全速力で背走しながらグラブの先でキャッチし、先制点を許さなかった超ファインプレーがありました。

事前の動きを分析してみると、オコエは二死満塁のピンチで安打を浴びたとき、相手の二塁走者が生還することを防ぐため、定位置より3mほど前に守った。でも相手の右打者が打つ直前、オコエは左翼方向へポジションを微妙に変えたんです。

味方の投手と相手打者の力関係、投げるボールを考えて『ここに飛んでくるのではないか』という予測のもとに守備位置をずらしたのですが、あれは捕手のサインが見えていたはず。そうでないと、あのタイミングでは動けない。

内野手が捕手のサインを見て守備位置を変えることはありますが、それをセンターのオコエがやったことがすごいのです。100m先の股間の指の動きをも逃さない。この好守備が、完封勝ちを呼び込みました」

オコエは、両親から授かった天賦の才だけに頼っているわけではない。視力のよさを、洞察力につなげている。プロ野球の楽天担当記者が明かす。

「オコエはキャンプの対外試合初戦となった2月14日の韓国・ハンファ戦で初盗塁を決めました。これが、単に足が速いからではなかったのです。オコエは一塁に出塁すると、その場で相手投手の癖を必死に探した。打者へ投げる時の相手投手の上半身の動きのわずかな癖を、あの短時間で見抜いたんです。それを試合後に聞いた球団関係者も、驚いていました。

韓国のチームですから今まで対戦経験があるわけではない。当然、コーチも選手に指示は出していない。そんな中で自ら考え、失敗をおそれず、チャレンジした。決して、恵まれた才能だけで出ている結果ではないんです」

才能に頼らない生き方は、挫折の経験が生んだ。中学2年の時に、大腿骨の成長板が股関節から離れてしまい、歩くだけでも痛みが伴う「大腿骨頭すべり症」を発症した。ズレを矯正する手術を受け、術後10ヵ月ほど、本格的に野球ができなかった。

病の影響もあり関東一高に入学しても、背番号をもらえたのは2年生にあがってから。同高の米沢貴光監督が振り返る。

「2年の夏の大会はほとんど毎試合足がつっていた。1番打者として出塁し、走ってホームに帰ってくる。熱い夏の大会を乗り切るだけの体力が不足していて、しかも、結果的に甲子園にもいけませんでした。その後、翌年の春の選抜大会出場をかけた秋の大会でも、準決勝で負けてしまい、もう目指すは夏の甲子園しかなくなった。

オコエは根本的な持久力がないことを自覚し、1500m走、3000m走といった長距離走のタイムをあげることにも貪欲になりました。自分自身で追い込む姿勢が、本当に変わりましたね」