本/教養

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電気の直流と交流は何が違うか、ご存知ですか?
森本雅之『交流のしくみ』
〔photo〕iStock

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20世紀の終わりに確立されたパワーエレクトロニクスは、交流を広範な分野により効率的に活用する技術で、交流の利用に大きな変革をもたらしました。

本書は、電気とはなにか、直流と交流の違いから、単相交流、三相交流、交流モーターなど交流技術と、さらにインバータを中心にしたパワーエレクトロニクスを、多くの図版を使い、初心者にも分かりやすく解説します。

はじめに ~直流と交流~

この本は交流について述べている。私たちが日々使っている電気の大半は交流である。家の中で壁のコンセントにプラグを挿して使っているのは、交流の電流である。

家の中のそこかしこにコンセントが設置されているが、自分の住まいにコンセントが何箇所あるのか、把握している人はほとんどいないと思う。家の中ではどこでも電気が使えるようになっている。私たちは照明や家電品などの様々な電気製品をコンセントに接続して無意識に交流電流を使っている。

その交流電流は発電所で発電され、高圧線や配電線を経由して家庭のコンセントまで届けられている。その間を流れている電流は、すべて交流電流である。

一方、乾電池や充電式の電池で使っているのは直流電流である。携帯機器などのように、電池が使えるようなものは直流電流を使っている。

しかし、電池に充電するための充電器はコンセントに接続される。充電器は交流電流を直流電流に変換し、電池を充電するための直流電流を調節している。パソコンなどをACアダプターで使う時も、ACアダプターはコンセントに接続される。ACアダプターはコンセントの交流電流を直流電流に変換し、さらにパソコンなどの内部の電池と同じ電圧に変換する働きをしている。

つまり直流電流を使う機器でも、その大元では交流電流を使っている。我々の日常生活は「交流電流で成り立っている」と言えるのである。

電気は大きく分けると「直流」と「交流」に分類される。では、直流と交流はまったく別物か、と言うと、そうではない。直流も交流も電気は電気なのである。直流も交流も同じ電気の基本に従う。直流と交流に共通することはかなり多い。

しかし、直流にも交流にも、それぞれに特有の現象があり、それぞれの特徴を生かして使い分けられている。この本を通して、どんな場合に交流電流が使われ、なぜ使い分けられるのかが理解できると思う。

ここで、直流と交流の基本的な違いについて説明する。

まず、直流電流について説明しよう。直流電流とは乾電池から流れる電流だと思ってもらいたい。図0.1(a)には乾電池、豆電球、スイッチが電線で接続されている様子が示してある。このような図は小中高の教科書でたびたび見かけたと思う。我慢してもう1回見てほしい。このように電気部品を接続したものを電気回路と言う。

いま、スイッチをオンするとしよう。すると、乾電池のプラスから電流が流れて、豆電球が光る。豆電球を出た電流は乾電池のマイナスまで流れて1周する。この時、電線を流れている電流の向きは、どの位置でも乾電池のプラスからマイナスに向かっている。また、どの位置でも電流の大きさは等しい。

次にスイッチをオフすると豆電球は消灯し、電流は流れない。スイッチをオンにして回路がつながらないと電流は流れない。この現象には次のような電気回路の基本が含まれている。

「電流は1周できる経路がないと流れない」

この基本は乾電池を使った直流の電気回路だけでなく、交流の電気回路でも基本となる。

次に交流電流を考えてみよう。図0.1(b)では乾電池に相当する部分にはプラグがあり、壁のコンセントに接続されている。この状態を交流電源に接続されていると言う。そのほかの豆電球、スイッチは先ほどの直流の電気回路と同じである。

直流回路の時と同じように、スイッチをオンすると回路がつながるので交流電流が流れる。交流電流が流れても豆電球は点灯する。また、スイッチをオフすれば交流電流は流れなくなり、豆電球は消灯する。交流電流も電気回路がつながれていないと流れないのである。

この時流れている交流電流は、直流電流とは何が違うのだろうか?

交流電流は電流の向きが常に入れ替わっているのである。交流電源は乾電池と異なり、プラス・マイナスが決まっていない。交流電源の2つの端子は、ある瞬間にはプラスになり、次の瞬間にはマイナスになる。

しかし電線を流れる電流がプラスからマイナスに流れるのは、直流電流の場合と同じである。そのため、交流電源の出力端子のプラス・マイナスの入れ替わりに応じて、電気回路全体の電流の向きが反転するのである。

通常、交流電流は電流の向きの入れ替わりが1秒間に50回または60回である。伝習の入れ替わりの回数を周波数と呼ぶ。簡単に言うと、交流電流とは電流の向きが常に入れ替わっている電流だと思ってほしい。

交流電流は常に向きが反転するため、直流電流と比べて何やら複雑なものに思えるかもしれない。しかし、スイッチを入り切りすれば豆電球を点滅させることができるのは、直流電流と同様である。また、ある瞬間を考えれば、電線を流れる電流の向きはいずれか一方に向いている。しかも、回路のどの部分でも電流の大きさは同じである。

つまり、ある瞬間で考えれば直流電流とまったく同じ状態になっているのである。交流も直流も同じ電気である、電気の基本法則は共通である。豆電球のように直流でも交流でも同じように点灯するものもある。しかし、直流でないと都合が悪いものもあり、また、交流を使わなくてはできないこともある。交流と直流は目的に応じて使い分けられている。

19世紀の終わりごろ、有名な交流直流論争があった。米国で新しく作る発電所の電気方式を交流にするか直流にするかの論争である。この時、直流を主張したエジソンは論争に破れ、新しい発電所は交流の発電所になった。

この時交流が採用された大きな理由は、交流を使うと長距離を送電できることにあった。交流は変圧器(第8章で述べる)により電圧を調節することができる。長距離を送電して電圧が低くなってしまっても、変圧器で電圧を再び高くすることができる。この論争では送電という目的にふさわしいということで交流が選ばれたのである。

この本は電気を利用する立場で、交流・直流の違いが理解できるように書いている。そのために、まず直流を念頭において電気の基本を述べてゆく。交流については、本書の後半でじっくり述べることにする。

著者 森本雅之(もりもと・まさゆき) 
1977年、慶応義塾大学大学院修士課程修了、三菱重工業(株)に入社。産業機械、鉄道車両、エアコンなど多種多様の製品のパワーエレクトニクス技術の研究・開発を行う。工学博士。2005年より東海大学教授。著書『電気自動車 電気とモーターで動く「クルマ」のしくみ』により電気学会電気学術振興賞 著作賞受賞。他に『入門 インバータ工学』『入門 モーター工学』『電気エネルギー応用工学』などがある。
『交流のしくみ』
三相交流からパワーエレクトロニクスまで

森本雅之=著

発行年月日: 2016/03/20
ページ数: 224
シリーズ通巻番号: B1963

定価:本体  900円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)

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