オリンパス事件「歪められた真実」
~大企業を守るためなら、冤罪を作りだしてもいいのか

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オリンパス巨額粉飾決算事件の“指南役”として、金融商品取引法違反などの疑いで東京地検特捜部に逮捕された「アクシーズ・ジャパン証券」会長の中川昭夫被告。真実を話しても聞く耳を全く持たない取り調べ検事に絶望、深刻な体調不良も相俟って「一刻も早く解放されたい」と弱気になり、検事の作文だらけの供述調書に次々と署名した。

この調書が中川被告を起訴する際の証拠として使われた。つまり調書の中身自体、検察側のシナリオに基づいて書かれた架空のストーリーなのだ。(前編はこちらから

損失の中身を聞かされていない

そもそも中川被告には、オリンパス側から具体的な損失の話を聞かされた記憶がないという。米国の「ウィルソン・クック」社との買収交渉を進めていた2004年か05年ごろの会議の席上、のちに中川被告とともに逮捕・起訴されるオリンパスの前常勤監査役(肩書は12年2月の逮捕当時)の山田秀雄氏から「オリンパスにはちょっと損があるんだ」という曖昧な言い方をされた記憶はあった。

だがどの取引で発生した損失なのかや、それがどのくらいの金額なのかといった具体的な内容について、山田氏は何一つ中川被告に明らかにせず、協力も求めなかった。

中川被告は「オリンパスの子会社や投資有価証券の価値が下がったか、為替取引で損を被ったのだろう」と考える程度で、具体的なことは山田氏に尋ねなかった。ましてやそれが違法に会計処理されているものだったとは、全く認識していなかった。一審の第11回目の公判で、中川被告は次のように証言している。

「オリンパスは監査役監査と会計監査の二重の監査を受けている東証一部上場の会社で、違法な会計処理がなされないように、連結貸借対照表で十分にチェックされていると思っていました。オリンパスに損失があったとしても、オリンパスの企業買収に携わる身としては不要な情報で、あえて詮索しないというのが常識なんです」

こうした中川被告の記憶を裏付ける証言を、実は山田氏自身が一審の第2回公判で行っている。中川被告の弁護人が「あなたも森さん(注:山田氏とともに逮捕・起訴された森久志オリンパス前副社長)も、中川さんとM&A(企業の合併・買収)の会議をする際に、このような簿外損失の話を積極的に言い出しにくいと思っていましたか」と尋ねると、山田氏はこう証言した。

「ええ、言い出しにくいというよりは、ある程度のことについて既に存じていらっしゃるという前提の下で話をしておりますので、何々これこれという数字で具体的に話をしたわけではありません」