新たな冤罪の可能性も?オリンパス「巨額粉飾決算事件」に残されたナゾ
巨額の粉飾決算に手を染めていたことが発覚し、謝罪するオリンパス幹部ら(2012年)

「そういうことばっかり言ってると、ライブドアの社長みたいに有罪になっちまうよ。村上ファンドの村上さんはゴメンナサイしちゃったから、裁判で無罪放免になったんだ」弱り切った中川被告に向かって、検事はこう言い放ったという――。

世間を震撼させたオリンパスの巨額粉飾決算事件。この事件についての裁判で、冤罪の可能性も感じさせる、あまりに不可解な判決が下された。ジャーナリスト・田中周紀氏の特別レポート。

オリンパスを守るため、罪をなすりつけた?

記者クラブに所属して経済事件を取材していると、どうしても捜査当局、なかでも検察庁の主張には何の疑いも挟まず、被告を極悪人として報道する癖がつく。特に検察側が初公判で読み上げる冒頭陳述には、事件を細部に至るまで詳らかにしてくれる資料として、絶対の信用を置きがち。裁判担当の記者はほとんどの場合、これに基づいて記事を書く。

もちろん大半の事件は冒陳の内容通りで、被告が事実関係を全面的に争うケースは数少ない。だが「何としても有罪にする」という検察側の強い意向の下で、検事の強引な取り調べに屈して自白した容疑者は、公判で全面否認に転じることが往々にしてある。こうしたケースがここ数年、特捜部が立件した経済事件で頻発していることは周知の事実だ。

特に事件を起こした会社が第三者委員会なるものを設立して調査報告書を作成し、検察側がこの報告書に基づいてシナリオを描いた事件の場合、検察側の冒陳を丸呑みにして記事を書くと思わぬ陥穽に陥る。事実関係に誤りはないとしても、その背景や「誰が犯罪行為を主導したのか」という重要な点を見誤る。それは正しい報道と言えるのだろうか。

最近それを痛感したのが、世間的にはとっくに決着したと思われている、大手光学機器メーカー「オリンパス」の巨額粉飾決算事件だ。

オリンパス側で粉飾決算を主導した菊川剛前社長、山田秀雄前常勤監査役、森久志前副社長(肩書はいずれも逮捕時点、以下同様)の公判は2年8ヵ月前の2013年7月、全員に執行猶予付きの有罪判決が下されて終了している。

筆者が問題視しているのはそちらの方ではなく、検察側から「損失隠しや粉飾決算の“指南役”」に仕立て上げられ、筆者も含めたマスコミから「オリンパスの3人を上回る悪役」と断罪された4人の野村證券OBの公判だ。

筆者は一審の段階から公判を傍聴しているが、この公判、オリンパスを潰さないために、粉飾の責任を何としても指南役に押し付ようとする検察側の意図が見え見えなのだ。だが大手メディアは判決の結果のみを伝えるだけで、公判の途中経過を伝えたところを寡聞にして知らない。

そこで本稿では、2月17日の二審で控訴を棄却された「アクシーズ・ジャパン証券」会長の中川昭夫被告の公判に焦点を当て、法廷での中川被告の主張を中心に2回に分けてお伝えしよう。私には中川被告が巨額損失の存在を知らされて協力したとは、どうしても思えないのだ。