大統領選 アメリカ
プーチン色に染まる世界
〜「偏狭なナショナリズム」が次々台頭する理由

トランプ現象と共鳴する新たな国際潮流
〔photo〕gettyimages

 プーチン大統領の「報復」

世界は今、アメリカ大統領選に耳目を奪われている。共和党候補指名争いで快走するドナルド・トランプ氏は具体的な政策などそっちのけで、ひたすら「アメリカを再び偉大な国にする」と絶叫し、支持者の喝采は高まるばかりのようだ。

スマホでのショート・メッセージなどがコミュニケーション手段で重宝される現状に照らすと、トランプ氏は時代精神を映し出すデマゴーク(扇動政治家)のようにも見える。彼が大統領になった場合の国際政治への影響を憂慮する声が強まっているが、アメリカで進行する「トランプ劇場」はどこか、コメディ・タッチだ。

「これは一体、悲劇なのか、喜劇なのか」。そんなセリフを吐きたくなるアメリカの現状である。

その一方でと言うべきか、トランプ現象とも共鳴する形でと言うべきか、世界を見渡すと、新たな国際潮流のうねりが起きているように思える。それは、端的に言うなら、ロシアのプーチン大統領が世界を「自分色」に塗り替え始めているということだ。

筆者が世界の現状を象徴する写真を1枚だけ選ぶとするなら、躊躇なく、冷めた笑みを浮かべるプーチン大統領の写真を選ぶ。彼はその虚無的な目つきで本心を隠しながらも、「報復」を果たしつつあるというある種の優越感に浸っているのではないかと想像する。

なぜ、そう思うのか。そして、そのことが国際政治にどのようなインパクトを持つのか。以下に説明していきたい。

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プーチン大統領は14日、シリアに派遣しているロシア軍の「主要部隊」を15日から撤退させると発表した。ジュネーブで14日に1ヵ月半ぶりに再開したシリア和平協議に合わせた外交攻勢だろう。プーチン大統領は軍事基地は残すと表明しており、ロシア軍の動向は慎重に見極めなければならないが、この「意表を突く行動(surprise move)」(英BBC)の伏線はあった。

英エコノミスト誌の2月20日号に「ウラジミール・プーチンのシリアでの戦争 彼はなぜ今停戦するのか」という長文の記事が載った。ロシアは昨年9月、アサド政権側についてシリアで空爆を始めたが、突如、停戦へと舵を切った背景を探る記事だ。

停戦は米露主導で合意に達し、2月27日発効。プーチン大統領は2月22日の声明で「米国との合意がシリアの危機的状況を劇的に転換させると確信している」と述べている。大統領自身の停戦への強いコミットメントを示唆する発言である。

エコノミスト誌の記事は、ロシアのシリア内戦をめぐる深謀遠慮、野望を分析するもので、「プーチン大統領は明確な戦略を持ち、ほとんど全てのレベルで成功しているように見える」と総括している。