障害者のリアル、そして恋愛を描いた漫画『パーフェクトワールド』に号泣

大切な人のために何が出来るのか

体調を崩した末にめまいを起こし、ホームから転落したつぐみ。伸ばした手は無情にも届かない。
もし車椅子じゃなかったら──。己の無力さに樹は打ちひしがれる。

阿部:僕ね、2巻でつぐみが駅のホームから落ちたのを見て、ハッとしたんですよ。もともと僕が有賀さんに「こんなのどうですか?」と言っていたのと逆のシチュエーションでしたよね。

有賀:そうですね。確か「つぐみと樹が河原を散歩していて、堤防のところから樹が転がり落ちてしまう」というお話だったと思います。

阿部:僕は自分が車椅子だから、樹がアクシデントに遭うシチュエーションが自然と思い浮かびました。健常者であるつぐみの方が危ない目に遭うなんて思いつきませんでした。

有賀:逆にしようと思ったきっかけは、取材させていただいた方々が、大事な人のためにしてあげられないことがつらいとおっしゃっていたことでした。自分自身が障害を持っていることは大変だしきついけれど、それと同じくらい大切な人に与えられないことがつらいのだなと。

阿部:それは僕も感じています。樹は目の前にいたのに彼女を助けられず無力感に苦しむ。一方つぐみは樹に心配をかけてしまったことや自分の弱さに苦しむ。自分も傷ついているけれど、相手も傷ついているという……あらためて見てもすごいシーンだと思います。

有賀:このシーンを描いて、何も問題がなくて完璧に満たされた状態だからといって、幸せに暮らせるかというと必ずしもそうじゃないと思いました。お互い相手のために出来ないことがあるからこそ、大切にしようと思えたり、出来ることが輝くこともあるだろうと。

阿部:現実としては、障害を負うと離婚率が高まる傾向にあります。突如障害者になったパートナーを受け止めきれず、相手の方がキャパオーバーになってしまうからです。僕と奥さんも一時期心が離れてしまったことがありました。

有賀:どうやって関係を修復したのですか?

阿部:障害が日常になるにつれて自然と、ですね。今では以前よりずっと仲良くなりました。有賀さんがおっしゃったように、限られているからこそ相手への思いが研ぎ澄まされたような気がします。