「僕は筒井康隆さんと半村良さんから遺伝子をもらった」
〜作家・夢枕獏の「わが人生最高の10冊」

こういう描写を僕もしたい!

3位は「シャーロック・ホームズ」。どの話というのではなく、シリーズ全部を推したいですね。もちろん、多大な影響を受けました。物語はたいてい、馬車でベーカー街にやってきた人が、「ホームズ先生、助けてください」と依頼してくるところから始まりますよね。僕の『陰陽師』シリーズでは、主人公の安倍晴明と源博雅が話していると、助けを求める人が牛車でやってくるんです(笑)。

4位と5位は、半村さんと同じく、僕が遺伝子をいただいたと思っているお二人のご著書です。

4位は筒井康隆さんの『東海道戦争』。内容もさることながら、僕が初めて読んだ時、強烈な衝撃を受けたのは、実はあとがきなんですよ。

1行目に〈僕は天才だから書きたいことはあまり苦労せずにすらすら書けるのだが〉ってある。「わあ、すごいな、この人は」と、心底ビックリしたんです。

この本の中の短篇はどれも面白くて筒井康隆がぎっしり入っているんですが、好きだったのは「しゃっくり」ですね。時間が繰り返してしまう現象を、“しゃっくり”と表現するセンスにしびれましたね。昔も今も、筒井さんは本当にすごい。

5位は平井和正さんの「ウルフガイ」。僕が平井さんから学んだのは、グロテスク・ビューティーです。悲惨でグロテスクなものを、美しく描写すること。

例えば、狼人間のように人が獣人となる「ウルフガイ」の中では、看護婦の三木という女性が血清を打たれて獣人化現象を起こすんです。彼女はCIAの連中から機銃掃射を受けて、体中に弾丸を撃ち込まれるんですが死なない。超人的な体内圧で弾丸が皮膚で止まり、弾き返される。で、その弾丸にあとから飛来した弾丸が、カチンと当たりながら、月光の中をこぼれ落ちていく。このシーンが美しいんです。

こういう描写を僕もしたいんだ! と強く思いましたね。以来、暴力を美しく描写するという方法が小説家としての僕の武器になりました。やっぱり、読書は創作の原点ですね。

(構成/大西展子)

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ゆめまくら・ばく/'51年神奈川県生まれ。『上弦の月を喰べる獅子』で日本SF大賞、『大江戸釣客伝』で泉鏡花文学賞、吉川英治文学賞などを受賞。『神々の山嶺』が映画化され、3月12日全国公開される