週刊現代
原発被害にあった「夜の森のおじいさん」の生命力に圧倒された話
〔PHOTO〕gettyimages

愛でられることなく散る桜

この2~3日、『花は咲けども』という歌をユーチューブで聴いている。いい歌である。

作ったのは、山形県のフォークグループ「影法師」(農業を営む遠藤孝太郎さん=63歳=ら4人)だが、全国各地のミュージシャンらが原曲をさまざまにアレンジ(英語版もある)して歌っているので、何度聴いても飽きることがない。

♪原子の灰が 降った町にも
変わらぬように 春は訪れ
もぬけの殻の 寂しい町で
それでも草木は 花を咲かせる
花は咲けども 花は咲けども
春をよろこぶ 人はなし
毒を吐き出す 土の上
うらめし、くやしと 花は散る

もう、お気づきだろう。この歌は、NHKの復興支援ソング『花は咲く』に対するアンサーソング(返歌)である。2月27日付朝日新聞夕刊によれば、モデルは、東北の花のトンネルで知られる「夜の森の桜」(福島県富岡町)だという。

ああ、そうだった。あの見事な「夜の森の桜」は、今年も誰にも見られず咲いて散る。何しろ帰還困難区域だから、来年も再来年も、たぶんずっと……。

そんなことを考えるうち、私はちょうど5年前まで夜の森の住人だったたけじぃ(ご本人はブログでそう名乗っていた)のことをふっと思いだした。

ひょっとして覚えておいでの読者もおられるだろうか。私が彼と会ったのはひょんなことからだった。イチF(福島第一原発)事故後の2012年末、私は福島県川内村に向かった。(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34403

イチFを肉眼で見ることができる場所が、唯一、川内村の山上にあると聞いたからだ。林道を車で登ったすえ、2階建てのログハウスに突き当たった。

眼下を眺めると絶景があった。青い空と太平洋。海岸線にたしかに原子炉建屋が見えた。でも、十数km先なのでマッチ箱以上に小さくて何もわからない。

私は無人のログハウスが気になった。あちこちに、丹念に手作りした野鳥の巣箱や子供の遊具が残っていた。持ち主は小鳥や子供の好きな人らしい。どこへ避難したのだろうか。

入口に「自然塾&木工房 遊木館」とあったので、それを頼りにネットで調べたら、「たけじぃの震災避難日記」というブログにたどり着いた。