浜岡原発「運転停止要請」のウラで復活した菅・仙石ライン
特命を受けた動いた細野豪志補佐官
浜岡原子力発電所〔PHOTO〕gettyimages

 中部電力は5月9日、菅直人首相の要請を受け入れ、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の運転全面停止を正式決定した。水野明久社長が記者会見で「首相の要請は重い」と述べたこともあって、今回の「浜岡停止」が「菅決断」であることを強く国内外に印象づけた。

 事実、国民に好感をもって迎えられたことは、中部電の要請受け入れ発表直前に民放各社が実施した緊急世論調査でも裏付けられた。今月下旬に行われる主要メディアの世論調査でも、内閣支持率の上昇が見込まれる。民主党内の「菅降ろし」は失速、菅首相が当分間、政権を維持することは間違いない。

 では、政権浮揚につながった「浜岡停止」要請はいかなる経過で決まったのか。

 4月初めまで遡る。菅首相は4月1日午前、首相官邸で会った東京工業大学の斉藤正樹教授から「一刻も早く浜岡原発を止めるべきだ」との助言を得た。さらに同4日午後に会った有冨正憲同大原子炉工学研究所長からも同様な提言を受けた。有冨、斉藤両教授は、菅首相が震災後に自ら内閣官房参与に任命した、母校の原子力問題エキスパートである。

仙谷発言がトリッガー

 そもそも菅首相が原子炉停止要請の根拠としてあげた「浜岡原発直下で発生すると想定される東海地震は今後30年以内に87%の確率」との報告は、実は今年の1月、文部科学省の地震調査研究推進本部が発表していた。有冨、斉藤両氏による首相への提言は同研究推進本部資料に基づくものだ。

 有冨教授との会談に同席した細野豪志首相補佐官は、その場で菅首相から「浜岡原発を止めたらどうなるか、調べてほしい」と指示された。その後、静岡県選出衆院議員であり、浜岡原発に巨大防潮堤建設が持論の川勝平太知事と連携する細野首相補佐官の隠密行動が始まった。

 東京電力福島第一原子力発電所事故対応についても「特命」を受けていた細野補佐官は、3月13日に民主党代表代行兼務で官房副長官として官邸に復帰した仙谷由人氏と関係を深めていたこともあり、浜岡原発停止問題でも同氏に相談している。

 筆者が会った官邸関係者も、仙谷官房副長官が4月中旬時点で「浜岡原発を全面停止するしかない」と語っていたことを認めている。

 仙谷氏が4月28日に官邸で開かれた与謝野馨経済財政担当相主導の「経済情勢に関する検討会合」で浜岡原発を止めるべきだと発言したことが菅首相の決断のトリガー(引き金)となった。奇しくも、同日、中部電は定期点検中の浜岡原発3号機の7月再開を発表している。

 この「菅決断」では、もう一人主要プレイヤーがいる。海江田万里経済産業相だ。同氏もまた早くから細野補佐官から相談を受け、「浜岡停止」が経済界に与える影響について密かに調査・検討してきた。

 電力行政の所管大臣である海江田氏が腹を固めたのは、「検討会合」の前日に官邸で開催された中央防災会議で先述の地震調査研究推進本部資料に加えて詳細なデータが盛り込まれた「東海地震の可能性」を提示されたからだ。出席者に配布されたデータは「持ち出し禁」扱いで、会議後、回収されたほど。

 今回の「浜岡停止」を秘密裏に協議してきた中核メンバーは、菅首相、海江田経産相、細野首相補佐官、仙谷官房副長官の4人であり、5月6日夜の菅首相会見に先立つ同日午後、枝野幸男官房長官を加えた最後の検討会議が官邸5階の小会議室で開かれた。経産省原子力安全・保安院と原子力安全委員会が事前に全く知らされていなかったほど、秘匿されていたのだ。

 それはともかく首相緊急会見後、首相要請は「唐突感がある」「なぜ浜岡なのか、説明不足」といった批判があった。が、勝てば官軍である。

 菅首相は6月22日閉会の通常国会を乗り切り、約12兆円とされる11年度第2次補正予算を巡る攻防が焦点となる8月召集予定の臨時国会を迎える。それまでに内閣改造と民主党役員人事を断行するなど、求心力回復を目指すはずだ。

 菅首相は会見直後、2ヵ月振りに仙谷官房副長官と会食した。これまで疎遠とされていた両者の関係修復を狙ってのことだが、恐らく同氏を新設の復興担当相に起用することになるだろう。

 今夏以降、この菅・仙谷ラインが機能すれば、菅政権は意外と長くもつかも知れない。
 

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