賢者の知恵
2016年03月04日(金) 木村 朗子

作家たちは「3.11」をどう描いてきたのか
〜「震災後文学」最新作を一挙紹介!

多和田葉子、桐野夏生、天童荒太…

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〔PHOTO〕gettyimages


文・木村朗子(津田塾大学教授)

東日本大震災から5年が過ぎようとしている。被災地のニュースはよほど注意深く追っていないと入ってこなくなったし、少なくとも東京あたりではほとんど話題にのぼらなくなっている。

記憶が薄れたといっても、震災を扱った小説を読めば、あの日の衝撃、あの日から考えたことがすぐにも甦ってくる。震災を描く文学は、記憶がうすれかけたこれからが出番だと思う。以下、震災を主題とする小説作品、「震災後文学」の最新おススメ本を紹介する。

被災地発の物語は、共同体の記憶を残す

震災後4年が過ぎて、ようやく被災地発の小説が現れた。総勢12人の岩手県出身の作家による震災をテーマにした小説を揃えた短編アンソロジーあの日から―東日本大震災鎮魂岩手県出身作家短編集』(岩手日報社2015)である。

震災直後にも岩手県の作家たちは12の贈り物 東日本大震災支援 岩手県在住作家自選短編集』(荒蝦夷刊2011)を刊行している。ただしこれは既発表作品をまとめたもので、印税を「義損金」とすることを目的とした出版だった。

『あの日から』の編者・道又力のあとがきによると、「東日本大震災は、岩手の作家に深刻な影響を及ぼした」という。

〈 非常の際にあっては、文学など何の役にも立たないと思い知らされたためである。作家の中には一時期、小説をまったく書けなくなった者もいた。

 あれから四年が過ぎた。

 作家は小説を書くことで、現実と向き合うしかない。そこで『12の贈り物』の続編として、岩手出身の作家による、震災を扱った短編集を企画したのである。 〉

この短編集のなかからいくつかの作品を紹介しよう。

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