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「東京23区格差」のウラ側
〜足立・葛飾・江戸川「下町三兄弟」の幸せな毎日

カネはないけど人情がある
週刊現代 プロフィール

今となっては、山手線の内側や、杉並・世田谷などのいわゆる「山の手」に住む人々の間では、

「足立ナンバーの車が割り込んで来たら、ヤンキーだからすぐ譲るべし」

「いまだに小岩のコンビニには、パンチパーマのチンピラがウンコ座りでタバコを吸っている」

「足立区にある公園に行ったら『池に犬を投げ込まないでください』と書かれた立て看板があった」

などといった「都市伝説」まで、まことしやかに語られる始末だ。

しかし、東京23区の様々なデータを綿密に調査して話題の、『23区格差』(中公新書ラクレ)を著した池田利道氏は、「今や、そうしたイメージは当たりません」と話す。

「実はここ数年、都内で最も犯罪件数が多いのは、一般的には静かな高級住宅街と思われている世田谷区です。また、面積あたりの件数で言えば新宿区がダントツに多い。一方で、足立区の犯罪件数は減っているのです。

治安の悪さを揶揄するような噂は、住民の『自虐』も含めて、面白おかしく語られているだけというのが実情ではないでしょうか」

こんな興味深いデータもある。日本で最も出生率の低い東京都の中でも、全国平均と遜色ない出生率を誇るのが足立・葛飾・江戸川なのだ。

足立区立第十四中学校は生徒数850人以上と、この少子化の時代にあっては異例のマンモス校。江戸川区にも、700人越えの中学校が珍しくない。前出の池田氏が解説する。

「足立・葛飾・江戸川の3区について特筆すべきは、東京の他の区とは『家族のあり方』が全く違うということでしょう。

若者も高齢者もひとり暮らしが少なく、子持ち世帯や3世代同居の世帯が他区に比べて圧倒的に多い。決して家の面積は広くないのに、1世帯の人数が多いんです」

確かに、葛飾区四つ木などの荒川の土手下、いわゆる「海抜0m地帯」には意外にもマンションやアパートは少なく、心なしかこぢんまりとはしているものの、戸建ての家ばかり建ち並んでいる。軒先にチャイルドシートが取り付けられた自転車が停まっている家も少なくない。

「足立・葛飾・江戸川の3区は、東京の中でも最後のほう、'60年代以降に開発された区です。今もこの3区には鉄道があまり乗り入れていませんが、昔はもっと少なくて、足立には東武伊勢崎線、江戸川には国鉄総武線しか通っていない時代がありました。つまり、もともとは東京都市圏に含まれていなかったわけです。

しかもこの一帯は、以前は田んぼとして使われていた。米作りというのは一人の力ではできません。家族のみならず、近隣の人とも助け合わないと成功しない。そうした風土が無意識のうちに受け継がれているから、ご近所や家族のつながりが密で、子育てもしやすい環境が残っているのだと思います」(前出・池田氏)