賢者の知恵
2016年03月06日(日) 週刊現代

「東京23区格差」のウラ側
〜足立・葛飾・江戸川「下町三兄弟」の幸せな毎日

カネはないけど人情がある

週刊現代
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〔PHOTO〕gettyimages

東京23区はまるでひとつのクラスのようで、カネ持ちセレブや秀才がいれば、ヤンチャもいるし、できない子もいる。でも、他人に勝つだけが人生じゃない。三兄弟は、そのことをよく分かってる。

スタバはないけど

2月のある昼下がり、江戸川区小岩の駅前には、のどかな陽光が降り注いでいた。どの町にもある牛丼屋や携帯電話ショップに混じって、ひなびたアーケードには個人商店もまだまだ残っている。

ある婦人服店の軒先には、ダウンのコートがぎゅうぎゅうに吊り下げられ、赤いマジックペンで「3000円」と書かれた値札が風に揺れていた。店主の老婦人がこう話す。

「安いでしょ。古着じゃありませんよ。みんな新品です。問屋から安く買ってきて、利益はほんのちょっとだけ。儲からなくたっていーのよ。

消費税が8%に上がっても、値上げしてません。とてもじゃないけど、お客さんからは取れませんから。とにかく安くしないと悪いでしょ。少しくらい辛抱しなくちゃね。

あらま、さっきのお客さん、商品忘れて帰っちゃった。ちょっと店番しててくれる?追っかけて渡してくるから。常連さんなんだけど、ボケてきちゃったのかしら」

そう言うと、彼女は初対面の記者に店を託して、走り去ってしまった。

商店街を抜け、駅から離れるにつれて、「何でもご相談ください」と書かれた質屋の看板や、ショッキングピンクで彩られた「タイ式マッサージ」といった看板が目につくようになる。

銀色のグリルをギラリと光らせながら、足立ナンバーの黒いミニバンが、「ブルン!ブルン!」と排気音も高らかに通り過ぎていった。ブロック塀に貼られた政党のポスターが、半分はがれて揺れている。

道の突き当たり、芝の土手を登ると、一気に視界が開けた。東京であることを忘れそうな広い空に、川面がまぶしい。目の前を流れる江戸川の向こうは、もう千葉県だ。

東京23区には、多くの都民が「そういえば行ったことがない」そして「正直に言って、あまり行きたいと思わない」と口を揃える場所がある。それが、東京都の東端にまるで防波堤のように陣取る、北から足立・葛飾・江戸川の3つの区、すなわち「下町三兄弟」である。

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