だから原発再稼働は進まない
〜”世界の常識”とかけ離れた日本の原子力規制

[Photo]GettyImages

世界の常識から外れる日本

原子力規制委員会(とその事務局である原子力規制庁)が発足した2012年9月から、もう3年半が過ぎようとしている。この間、電力会社など原子力事業者は、計26基の原子炉について、新規制基準の適合性審査に係る申請をした。今年2月22日時点で「再稼働(=発電再開)」ができているのは、九州電力の川内1号機・2号機、関西電力の高浜3号機の計3基だけ。

なぜ、こんなにも再稼働が進んでいないのか?

それは、規制委・規制庁による規制運用が、実に不可解だからであろう。規制委の田中俊一委員長が作文したとされる、法的根拠のない“委員長私案(「原子力発電所の新規制施行に向けた基本的な方針(私案)」☆1)が、発電再開を認めていないからだ。

☆1https://www.nsr.go.jp/data/000058874.pdf

どのような業種業態であれ、大きな事故の後に、その教訓を踏まえた新しい保安基準を施行する場合、その新基準を満たすための工事等に関しては、それぞれの業種業態に相応しい適切な猶予期間を設定し、その猶予期間内に工事等を完了させるよう規制を運用するのが常道である。事故プラントについては稼働停止や廃止措置に移行させるにしても、事故を起こしていない他の同業種プラントについては、猶予期間内での工事完了を約束させながら、旧基準での稼働を容認するのがごく当たり前のこと。

事故を踏まえて最新の技術・知見を取り入れた新基準に適合するよう既存の設備を更新・改造することを「バックフィット」と呼ぶ。このバックフィットには、適切な猶予期間が設定される。それが世界の常識なのだ。過去2件の原子力事故である米国・スリーマイル島事故(1979年)や、旧ソビエト連邦・チェルノブイリ事故(1986年)の後でも、事故プラント以外の原子力発電所は稼働を続けた。

しかし、日本では違った。

2011年3月11日の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故を契機に、他の全ての稼働中の原子力発電所が、その後の定期検査に伴う稼働停止以降、猶予期間なく、新規制基準に適合していると認められなければ再稼働ができない状況にある。日本の全ての原子力関連施設は今、諸外国の原子力規制では到底考えられないような超長時間を要するバックフィットを強いられている。

このバックフィットに係る規制委・規制庁の行動や審査が、いかに諸外国の原子力規制や他の産業保安規制の運用からかけ離れたものかを考えると、本当に恐ろしい話になる。計算方法にもよるが、年間2~4兆円規模のエネルギーコストを日本国民は追加負担している。

原子炉の寿命に関して、科学的根拠のない“40年規制”を敷いている。これにより今、関西電力の美浜3号機などは、運転許可を失効させられる岐路に立たされている。

更に、法的根拠のない“有識者会合”を設置し、いわゆる活断層に関する問題の結着をそこに丸投げしている。日本原子力発電の敦賀2号機、北陸電力の志賀1号機・2号機、東北電力の東通1号機などを廃炉に追い込もうとしているように見える。これらが欧米並みの高稼働率で稼働した場合、LNG・石油火力発電の代替として年間2600~3800億円のコスト削減能力を持っていることを、規制委・規制庁は理解しているのだろうか。

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