賢者の知恵
2016年02月25日(木) 現代ビジネス編集部

日本にわずか2000人!
病理医が主人公の医療漫画『フラジャイル』はこうして生まれた

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「論理と顕微鏡。それが彼の凶器」――。

高度な手術で難病を治すでもなく、患者の声に耳を傾け、ともに病気と闘うわけでもない。彼はただひたすらに顕微鏡を覗き、データと証拠を集める。病気の原因を調べ診断を下す、日本にわずか2000人しかいない病理医を主人公にした、まったく新しい医療漫画『フラジャイル』(原作・草水敏、漫画・恵三朗『アフタヌーン』誌上で連載中)が話題だ。

(コミックス第一巻の冒頭部を現代ビジネスでも公開中。こちらをクリック)

現在、単行本は5巻まで発刊されており、この1月からは長瀬智也主演でドラマ化もされている(フジテレビ系で毎週木曜日午後10時~)。

ドラマはいよいよクライマックスを迎えるが、そもそも原作者の草水敏氏は、なぜ病理医学という特殊な世界にスポットライトを当てたのか。漫画製作の舞台裏を覗いてみよう。

既存の医療ドラマに違和感があった

「なぜ病理医というなじみのない職業をテーマに選んだのですか」

『フラジャイル』をつくるにあたり医療関係者を取材してまわったとき、何度もこの質問を受けました。医療モノのドラマや漫画といえば、主人公である天才外科医が、卓越した手術テクニックであらゆる難病を解決する、というものが定番です。「なぜ病理医を?」と問う彼らには、手術もしない、薬も出さない、患者に会うこともない医者が漫画の主人公になるという発想がなかったのでしょう。

でも、そう尋ねてこられる方に「では、実際の医療の現場にそんな天才外科医がいますか?」と逆に質問すると、みなさん「いや、あれはドラマの世界ですから」と苦笑される。現実には「たった一人ですべてを解決できる医師」なんていないんです。

では、実際にはどうなっているのか。従来の漫画やドラマにおいて、誰も注目しなかった医療現場の人間関係があることに気付きました。臨床医の方々との話の中に、「病理」という言葉が頻繁に登場するのです。

「病理で確認してから」「病理にも診てもらって」……どうやら、患者から見えないところに、謎の医者がいるらしい。そこから病理医に注目し、調べ始めたのが、この作品を描くきっかけとなりました。

その時の私と同様、病理医についてご存じない方も多いでしょう。ごく簡単に言うと、病理医とは、患者の体の細胞を顕微鏡で観察することで、その病名を特定する仕事です。

日本の医師の総数は、いまや30万人を超えていますが、その中で、病理医はわずか2000人しかいません。患者が直接顔を合わせる機会がほとんどないことも、彼らがあまりクローズアップされなかった理由のひとつでしょう。

これまで大きな注目を集めることがなかった仕事であるにもかかわらず、医療の世界で彼らが担う役割は、あまりに大きいのです。たとえば、ガンを疑うような場合、多くは病理医が最終的な診断をつけています。それによって、治療の方針も決まります。手術をするのか、しないのか。ガン細胞をどこまで取るのか。どんな薬を最初に試してみるべきか。

そこで、間違った診断を出せば患者を死なせてしまう可能性も十分にある。つまり、「人の生死」というドラマに、病理医が大きく関わっている、ということです。 

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