「五郎丸ルーティン」の生みの親が明かす「心の鍛え方」
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荒木さんがいなければ、僕の「ルーティン」は完成しなかった――五郎丸歩

ラグビー日本代表の快進撃を支えた、メンタルコーチの荒木香織さん。アメリカの大学院でスポーツ心理学の博士課程を修めたメンタルトレーナーである彼女が、『ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」』を上梓した。五郎丸と二人三脚で「ルーティン」を作りあげた筆者だから書ける秘話が詰まったこの一冊。その一部を特別公開する。

心臓が破れるほどの興奮!

私の手許にひとつのメダルがあります。

2015年にイングランドで開催された第八回ラグビー・ワールドカップに出場した選手に贈られたものです。

もちろん、私は選手ではありません。ですから、もらえるはずはないのですが、南アフリカとの初戦の前でした。廣瀬俊朗(ひろせ・としあき)選手がやってきて、「選手からです」と手渡されました。

びっくりしました。なにしろ、いま言ったように、そのメダルは選手しかもらえないのです。

「それ、誰かのものじゃないの?」

そう訊ねたら、「いいんです、いいんです」と……。

私はメンタルコーチとして三年間、四シーズンにわたって日本代表チームに携わりました。メンタル面から選手を強化したのです。南アフリカ戦は、私たちにとってその成果が試される集大成と言えました。その決戦を前に、選手たちはここまで伴走してきた私に、「一緒にいてくれてありがとう」という気持ちを示すとともに、試合に臨む覚悟を見せようとしてくれた。私はそう思いました。

その南アフリカ戦。私は生後11ヵ月の息子と一緒に現地ブライトンで観戦しました。ワールドカップで過去二回優勝、今大会でも優勝候補に挙げられていた巨漢ぞろいのスプリングボクス(南アフリカ代表の愛称)を相手に、日本の選手たちは攻めては怯むことなく果敢にぶつかりに行き、守っては何度倒されてもすぐに起き上がり、タックルを繰り返しました。

ミスも数えるほどしか犯さず、これまでの日本代表ならあきらめてしまっていたかもしれない局面でも決して気持ちが折れることなく、懸命に立ち向かった。その姿は、感動的でした。

勝利が決まったときは、いままでの人生のなかで最高に興奮しました。私はわりと何が起きても醒めているタイプなのですが、このときばかりは心臓が破れるんじゃないかっていうくらい興奮しました。