「最強」とはなにか。日本人で初めてムエタイ王者になったキックの鉄人に聞いてみた

【最強さん、いらっしゃい!】
細田 マサシ

突然のデビューを告げられ…

──その鬼の黒崎にいきなり対面したわけですね。
藤原 「お前何の用だ?」って言うから「キックをテレビで見て……」「だから何だ?」「入門したいんですけど」って言ったら、「じゃあ入門書を書け」って。

──早いですね(笑)。
藤原 俺だってとりあえずは見学するつもりだったんだよ。どんな感じか見てみたかったし。

──女の子と出会という目的もありますしね(笑)。
藤原 でもなんか金縛りみたいになって動けなくてさ。「入門書書きました」って言ったら「ほい、じゃあ金」って(笑)。

──いきなりですか(笑)。
藤原 入会金が1万円で月謝が9千円、合計1万9千円。当時にしては結構高いんだよ(笑)。

──で、そこから入門ですか?
藤原 入門っていってもなんにもわからないからさ。「どうしたらいいんですか?」って訊いたら「好きにしろ」って。

──すげないですね(笑)。
藤原 「サンドバッグとか色々あるんだから自分で好きに使え」って先生は言うの。それでいつ練習に行っても平日の昼間は誰もいないんだ。全然フィットネスジムと違った(笑)。

──先生はいなかったんですか?
藤原 先生はいるんだよ。でも新聞とか読んでてさ、「教えて下さい」って頼むんだけど「好きにしろ」って言うだけ。でもさ、俺も経験があるわけじゃないから、全然練習にならないのよ。

──だって初心者ですもんね。
藤原 今さ、わりとサラリーマンの人でも格闘技のジムとか通ったりしているじゃない。OLさんとか。あれだって、トレーナーとかが、なんとか飽きさせないように、あれやこれや工夫してやるわけでしょう。「上手くなりましたねー」とか積極的に声をかけたり、ミット持ってやったり、ゲーム的なことをやらせたりとか。

──そうですね。
藤原 夢中になって通わせないと商売にならないんだから。それなのに先生はなーんにもしないで新聞読んでる。「つまんないなあ」って。俺は夜学に通っていたから、昼間しか通えない。だから「夜はどんな感じなんだろう」って気にはなっていて、一度学校を休んで覗いてみたんだ。そしたら同じ年代の若い人がいっぱいいて、昼間と違って活気があった。

──みんな昼間は働いていたんですね。
藤原 それで彼らにまじって練習をしたら、これがまた楽しくてさあ。夜は学校があるんだけど、やっぱりみんなと一緒に練習したいじゃない。強くなりたいし、いろんな技も覚えたい。そう思ってね、ちょいちょい学校を休むようになったの。そしたら、一カ月くらいした頃に先生が「お前、試合やってみっか」っていきなり言うわけ(笑)。

──早いなあ!