ブルーバックス

コーヒーの「おいしさ」はどこで生まれるのか

旦部幸博=著『コーヒーの科学』
旦部 幸博
このエントリーをはてなブックマークに追加

私は子供の頃の理科好きが高じて科学者になったような、いわゆる典型的な「理系人間」で、物事の原理や理論を考えずにはいられない癖があります。

また大学院時代は生薬薬理という、薬用植物に含まれる有効成分を抽出して薬効を調べる研究が専門だったため、特にコーヒーの香味成分に興味を抱きつづけてきました。

実際に自分で煎ったり淹れたりしていると、やり方一つでコーヒーの香味が大きく変わり、「コーヒーの香味の元になるのは何だろう?」「焙煎や抽出のとき、それらの成分はどう変動しているのだろう?」など、疑問が次々に湧いてきます。

ところが、国内のコーヒーに関する書籍をいろいろ探しても科学的な情報に踏み込んだものは少なく、答えはもちろん、手がかりさえもなかなか見つかりません。そこで古い専門書を一通り読んだ後は、海外の学術論文から情報をかき集めました。

幸いPubMedなどの文献検索がオンラインで可能になり、ネット経由で入手可能な論文も増えたため、コーヒーに関する論文なら分野を問わず、片っ端から内容をチェックしつづけました。

研究者とはいっても自分の専門分野以外に関しては素人同然です。「大学時代にもっと真面目に勉強しておけばよかった」と後悔しつつも、古い記憶と資料を頼みに、また知らない話題は教科書を見つけて一から勉強して読み進め……気付けば入手した文献はいつしか千本を越えました。

その甲斐あって、最近やっとコーヒー研究全体の輪郭がおぼろげに見えてきた気がしています。ただし、これらの研究は大企業の研究所で行われたものも多く、私たちに身近な、家庭や中小の自家焙煎店には当てはまらない部分が多々あります。現在は、親交のあるコーヒー屋さんたちや趣味人たちと一緒に、そのギャップを埋めていくことが当面の関心事になっています。

何だか、前書きだか自己紹介だか判らなくなってきましたが、本書はそんな私が二十余年前に読みたくてたまらなかった「コーヒーの科学」の本です。これまでに得た知識をエスプレッソみたいにぎゅっと濃縮して、ページの許すかぎり詰めこみました。

当時の私と同じようにコーヒーを深く知りたいと願う人、理科好きの人、知的冒険を楽しみたい人、そして何より、コーヒーが好きな人たちの「なぜ?」に答える一冊になればと願います。

それでは、ぜひお気に入りのコーヒーでも飲みながら……。

著者 旦部幸博(たんべ・ゆきひろ) 
1969年長崎県生まれ。京都大学大学院薬学研究科修了後、博士課程在籍中に滋賀医科大学助手へ。現在、同学内講師。専門は、がんに関する遺伝子学、微生物学。人気コーヒーサイト「百珈苑」主宰。自家焙煎店や企業向けのセミナーで、コーヒーの香味や健康に関する講師を務める。著書に『コーヒー おいしさの方程式』(共著、NHK出版)。
『コーヒーの科学』
「おいしさ」はどこで生まれるのか

旦部幸博=著

発行年月日: 2016/02/20
ページ数: 320
シリーズ通巻番号: B1956

定価:本体  1080円(税別)

     ⇒本を購入する(Amazon)
     ⇒本を購入する(楽天)

 
(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)

ブルーバックス公式サイトへ

ブルーバックス前書き図書館のメニューページはこちら

記事をツイート 記事をシェア 記事をブックマーク