賢者の知恵
2016年02月16日(火) 藤岡雅

東京大学・物価のスペシャリストが提唱!「賃金ターゲットが日本経済を救う」

アベノミクスはもう古い?

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【PHOTO】iStock

日本経済はずっと「異常」が続いている

今、アベノミクスは明らかに、壁にぶつかっていると言えるでしょう。このままではデフレ経済に逆戻りしてしまう。「インフレ・ターゲット」ではなく、今こそ「賃金ターゲット」を導入すべきです。

東京大学大学院教授、渡辺努氏は、物価のスペシャリストである――。かつて日本銀行で調査統計を担当し、現在は、内閣府の経済財政諮問会議の政策コメンテータも務めている。日銀の政策決定の重要な情報源として利用されている「東大日次物価指数」(以下、東大指数)の生みの親でもある。

昨年、12月1日に2万円を付けた日経平均は、これまでに5000円超も下落した。リーマンショック後にも匹敵するような下げ相場に、日銀は1月29日に追加緩和してマイナス金利を導入したが、渡辺氏は「効果は乏しい」と指摘。最近の東大指数の動向からも「このままではデフレに逆戻りしてしまう」と強い危機感を募らせている。

渡辺氏はこの際、日銀・黒田東彦総裁が進める「インフレ・ターゲティング」を廃し、「賃金ターゲティング」を採用するよう提唱をしている。アベノミクスの根幹を担う「第一の矢」である金融政策の大転換を促しているのだ。渡辺氏の提唱する「賃金ターゲット」とは何か。

過去10年間を振り返ってみてほしい。東京メトロの初乗り運賃は、消費税が8%に増税された14年4月以降に増税分が上がっただけで、ほとんど変っていません。また一月に一度、理容店に行って髪を切ってもらう、その料金もほとんど変わってはいない。むしろ「QBハウス」のような安い理容店ができて、値段は下がっている。

「宅急便」の料金もしかり、「吉野家」の牛丼もしかり。家賃の相場、塾の授業料、そして何より、私のいる東大の授業料も過去十数年にわたり、ほとんど変っていません。その結果、何が起きたのか。私の給料も多くの皆さんの給料も、下がりこそすれ、上がることはほとんどなかったのです。

これは、おかしいことなのです。少なくとも日本がバブルに沸いていた時期まで、人々の賃金は右肩上がりでした。その時期、物価の上昇率は今よりもずっと高かった。3年前、日本銀行・黒田東彦総裁が物価目標を掲げて、現にいま日用品の物価は上昇してきています。それなのに、多くの国民の賃金は依然としてあがってはいない。なぜ我々の賃金は上がらないのか。それを切実に考えるときに来ています。

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