「餃子の王将」社長射殺事件の行方と被疑者Xの正体
はたして真相に迫っているのか?
〔photo〕iStock

文/一橋文哉

なぜ今頃こんな話が?

「何でこんな話が事件から2年も経ってから飛び交い、大騒ぎになるんや。今の関西は、それどころやないやろうが……」

2015年暮れ。忘年会シーズン真っ盛りの大阪・ミナミのネオン街だが、8月に分裂した我が国最大の指定暴力団、六代目山口組と神戸山口組の対立がここに来て一気にヒートアップ。なにわの街は何やら重苦しく、緊迫したムードに包まれている。

当初こそ暴対法などの規制と警察当局の監視もあって、水面下の組員引き抜き、縄張り争奪戦に留まっていたが、12月半ば、六代目執行部の五指に入る大物組長が、組員の神戸側への集団離脱を苦に自殺を図ったという衝撃的なニュースが噴出(未だに公表されていない)。

17日夕、神戸系組員がゴルフクラブを手に六代目直系秋良連合会事務所に殴り込みをかけると、夜8時にはミナミの繁華街で秋良関係者が神戸系組員を囲んで、バットなどで暴行。翌18日早朝、今度は秋良傘下の組事務所に乗用車が突っ込むなど、まさしく“抗争勃発前夜”の様相を呈しているのだ。

そんな中でマスコミ各社が一斉に大きく報じたのが、2年前の同じ暮れに起きた「餃子の王将」を全国展開する「王将フードサービス」の大東隆行社長(当時)射殺事件(以下、王将事件と呼ぶ)の続報であり、「何で今頃……」という話であった。

* * *

王将事件は2013年12月19日午前5時40分頃、京都市山科区にある同社の本社前駐車場で、大東氏(当時72歳)が何者かに銃撃され、胸や腹に銃弾4発が撃ち込まれ、死亡したものだ。

京都府警が弾丸や薬莢を鑑定した結果、凶器は掌に納まる小さな25口径自動式拳銃で、早朝出勤した大東さんが車から降りた直後、至近距離から短時間で連射されたことが判明。車内に多額の現金が残されており、府警は延べ6万6000人の捜査員を投入し、大東氏に恨みを抱き、銃の扱いに慣れた者の犯行と見て調べてきた。

だが、寒くて暗い冬の雨天の早朝に発生したため、目撃者がいなかった。また、犯人がサイレンサーを装着したか布に包んで撃ったらしく、犯行時刻に銃声を聞いた者もおらず、捜査は難航した。

唯一の頼りは、本社向かいの倉庫に設置された一台の防犯カメラの映像。それが発砲の際に出たと見られる複数の閃光をキャッチ、犯行前後の小柄な実行犯の動きを、別の倉庫棟に設置されたセンサー付きライトが反応して点灯したことで映し出していた。

この倉庫棟横の通路から犯行後、バイクのヘッドライトと見られる光が現れて東に遠ざかる様子が確認され、府警はこの通路で待ち伏せした犯人がバイクで逃走したと断定した。

それから2年というタイミングで、各社に一斉に報じられたのは《(この犯人が潜んでいた)通路で採取したタバコの吸殻から検出されたDNA型が、九州地方の暴力団幹部Xのものと一致した》というニュースであった。

しかも、そこには続けて、《京都府警は組員の当時の行動を詳しく調べるとともに、年明けにも現地の警察と合同捜査本部を設置し、九州方面を集中捜査する》と書かれてあったから、読者は皆、こう感じたに違いない。

「この組員が犯人に違いない。これで事件解決の日も近いな」

しかし、現実はそれほど甘いものではなかった。

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