自衛隊「海外派遣」、私たちが刷り込まれてきた二つのウソ 〜ゼロからわかるPKOの真実20年以上ずっと憲法違反

2016年02月13日(土) 伊勢﨑 賢治

伊勢﨑 賢治賢者の知恵

upperline

自衛隊は「武力の行使」と一体化しない、という大ウソ

過日、数あるPKOミッションの中で、最も過酷な現場と言われるコンゴ民主共和国に行ってきた。南スーダンの隣である。

PKFの最高司令官はブラジル陸軍のサントスクルズ中将。PKFトップを務めるのは2回目。ここの前の任地はハイチ。そう。自衛隊が派遣されていた。

コンゴ民主共和国東部最前線にて、PKF最高司令官サントスクルズ中将と筆者

最前線の部隊を訪問する道中の立ち話で、「ハイチでは本当によくやってくれた」と自衛隊の勤勉さを称賛するサントスクルズに、「将軍。知ってる? 日本じゃ、自衛隊の指揮権は、東京にあるって言っていたんだよ」と言うと、「ざけんな」と即座の反応。

本当に、ふざけるな、である。

自衛隊はPKFであるだけでなく、PKFという多国籍軍としての「武力の行使」に"一体化"して活動する。当たり前である、一体化しなかったら、多国籍軍としてのPKFは成り立たない。

しかし、歴代の政府は、自衛隊の活動は「武力の行使」と"一体化"しないという"いわゆる"一体化論(政府は外向けに英訳でthe theory of so-called "Ittaika with the use of force"とする)を編み出し、9条と抵触しないという言い訳としてきた。

この一体化論の基礎となるのが、これもまたso-calledが付く「後方支援」「非戦闘地域」という、日本の法議論のためにつくられた、戦場における全く弾が飛んでこない仮想空間である。

自衛隊派遣に反対するリベラル勢力も、特段の検証もなく無批判にこれを受け入れ、右・左の自衛隊論争の"土俵"を築いてきた。

厳密に見てみよう。

PKFのような多国籍軍と、一国の軍隊の行動には、決定的な違いがある。

言うまでもなく、軍隊とは、殺傷行為の如何が、人権・刑事の立場からではなく、軍規の立場から統制される職能集団である。通常、軍規・命令違反は、厳罰に処される。軍規、そして、その軍法会議の管轄権は、その軍だけに限られる。

国連は、いまだ地球政府になりえていないから、国連軍法会議なるものは存在しない。多国籍軍の活動で起こる軍事的な過失を、ある一派遣国の軍法会議で裁いたら、それは重大な内政干渉になってしまう。

(軍事法典を持たない自衛隊が、もしPKFの現場で軍事的な過失を犯したら? これは、日本に別の深刻な問題を投げかけるが、詳しくは拙著『新国防論 9条もアメリカも日本を守れない』を参照願いたい。)

かりにPKFを構成するある一派遣国の政府が、なんらかの理由で撤退を決定した時、PKF統合司令部に、それを覆す政治力があるか?

その撤退を「敵前逃亡」だと謗(そし)っても、統合司令部に、それを止める力はない。多国籍軍とは、基本的に有志連合。自分勝手な撤退を律するのは、せいぜい外交的な信用の失墜、ぐらいである。

この意味で、自衛隊は、多国籍軍として一体化"しない"。でも、"しない"のは、9条を戴く自衛隊だけでなく、すべての派遣国の部隊も、なのである。

"しない"のは、この一点だけ。あとは、すべて一体化"する"。

次ページ 自衛隊は「敵」からどう見えるか…
前へ 1 2 3 4 5 次へ

このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
関連記事


underline
アクセスランキング
1時間
24時間
トレンドウォッチ