【スクープ!】隠ぺいされた若き消防隊員の「パワハラ自殺」を告発する
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「最後の最後まで、わがままな息子でごめんなさい。葬儀はあまり大きくしないで。それが最後のお願いです」

二年前、ある消防本部の青年隊員が自殺した。遺書や同僚の証言から、原因は上司のパワハラにあったことは明らかだった。ところが、消防本部はこれを隠ぺいしようとしているという。2014年に起こった消防隊員の自死は少なくとも7件。さらに、東日本大震災の救援にあたった消防隊員がPTSDになるなど、彼らのケアは急務となっている。だが、国や自治体の腰は重い。ジャーナリスト・鈴木哲夫のスクープリポート。

『誰かに迷惑をかけてまで生きている価値はありません』

これは、一昨年の6月、日本海に面したとある市で起きた出来事だ。

午前9時半過ぎ、この市の消防本部分署の幹部から、署に勤務する二十歳の青年の自宅に突然電話が入った。受話器を取ったのは母親だ。

「お子さんが訓練に来ていないのですが、もう家は出ていますか」

青年は、いつものように午前8時半には自分の車で家を出ていたので、母親はこの幹部にその通りに告げた。「なにかの事情で出勤が遅れているのだろう」と、このときはあまり気にかけなかった。

二度目の電話があったのは、午後1時半ごろ。鳴ったのは自宅の電話ではなく、母親の携帯電話だ。かけてきたのは、さらに上司である分署の署長。一気に胸の鼓動が高まる。母親が電話に出るなり、署長は唐突にこう告げた。

「お子さんの同僚のLINEに『ごめんなさい。今まで本当にありがとうございました』とのメッセージが送られたので心配です。すぐに警察に捜索願を出してほしい」

言葉を失ったが、両親はこの連絡を受けて、すぐに警察に捜索願を出した。そのまま消防本部に向かったのだが、両親を待っていたのは、最悪の結果だった。夕方になって、青年が河川敷で自死しているのが発見されたのだった。

《家族 20年間と約11か月、育てていただき本当にありがとうございました。もう疲れました。でも生まれ変わってもまたこの家族で一緒にいたい》

家族にあてられた遺書
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現場のそばにあったノートには、青年の字でそう書かれていた。家族に向けた、遺書だった。

一体、青年になにがあったのか。実は、このノートの別のページには、職場あてに書かれたメッセージがあった。そこに、消防本部の分署内で何が起こっていたかを読み解くカギがあった。

《この結論に行きつくまで、とても時間をかけ、とても迷いました。でも、自分のような技術、体力、気持ちが無いような人間はここにいてもなんの役にも立たないと思いました。だれかにめいわくをかけてまで生きる価値は私にはありません。なので死にます》