「ゴジラ」を想像したら胃がんが消えた?
「病は気から」ウソみたいな本当の話

作家・高橋三千綱さんインタビュー
[Photo:iStock]

病気って「ありがたい」!?

―糖尿病、肝硬変、さらに食道がんに胃がんという大病相手の闘病をつづった、自伝的小説です。病気と闘う過程は、やはり人生を見つめなおす機会になったのですか。

いや、そんな大仰なものじゃないんです。僕はもともと特別な人生観は持ち合わせていないんです。思い出を作ることが人生だと思ってきたから、若いころからやりたいことをいろいろやってきた。馬で40日もロッキー山脈を旅したり、映画を作ったり、ゴルフにのめり込んだり。

医者から「余命4ヵ月」と宣告されて死を意識するようになると、頭に浮かんでくるのはそういう昔の思い出ばかりなんです。この作品はその思い出を書いてみたわけですが、「なんだ、俺の人生って大したことないな。なんとなく愉快に過ごしてきただけじゃないか」と。

でも、昔の思い出に浸るのもなかなかいいものです。そういう意味じゃあ、一度大病を患ってみるのもいい。若い頃の思い出が自然によみがえってきますからね。だからこの本は、健康な人に「一度、病気に罹ってみたいな」と思わせるための本なんです(笑)。

―大の酒好きだった主人公が、糖尿病になって医者から止められている酒をなかなか断ち切れず、肝硬変になって苦しめられる様が描かれています。

フィクションの部分はほとんどないんですよ。実際、酒はなかなか止められませんでした。

闘病もそれなりに大変でした。一番まいったのは食道がんの手術の2ヵ月後、胃の中にあった静脈瘤の処置のため再入院した頃でした。手術を受けようとしていたのに、医師から「血糖値が高くて手術できない」と言われて、自宅に帰された。そうしたらその3日後、肝性脳症になってしまった。肝機能が低下しており、処理されるはずのアンモニアが脳に回って、意識障害を起こしてしまったんです。

夜中に下着のまま庭を歩き回ったり、お腹に激痛が走るのでトイレに行ったら脂汗が一升くらい流れ出たり。結局その時は救急車に乗って緊急入院する羽目になりました。

こんなに家族に迷惑をかけるのなら、こっそり毒キノコでも準備しておいて、いっそ自分で死んでしまえばよかった、と本気で思いました。