賢者の知恵
2016年02月11日(木) 牧野 智和

少年犯罪は「凶悪化」も「増加」もしてない!?
マスメディアが決して報じないこと

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〔PHOTO〕iStock


文/牧野智和(大妻女子大学専任講師)

少年非行をめぐる認識と実態のギャップ

最近、「少年非行」は増えていると思いますか、それとも減っていると思いますか。

78.6%――。

この数字は、内閣府が2015年7月から8月にかけて行った「少年非行に関する世論調査」での設問「あなたの実感として、おおむね5年前と比べて、少年による重大な事件が増えていると思いますか、減っていると思いますか」に対して、「増えている」と答えた人の割合です。2010年に行われた前回調査でも、「増えている」と答えた人は75.6%を占めていました。

このような傾向は、他の調査でもおおむね同様だといえます。日工組社会安全財団(旧・社会安全研究財団)が2001年から継続的に行っている「犯罪に対する不安感等に関する調査研究」でも、「(周囲を見回して、)あなたは少年の犯罪・非行が増えていると思いますか」という設問への回答結果は、つねに「増えていると思う」が半数を超え、「減っていると思う」と答える人は各回1~3%前後に留まっています。

犯罪の「量」への認識のみならず、「質」への認識も、やはりほぼ同様です。「犯罪に対する不安感等に関する調査研究」では、「(周囲を見回して、)あなたは少年の犯罪・非行が悪質になっていると思いますか」という設問がありますが、その回答結果は一貫して「悪質になっていると思う」という回答が6割を超えています。

しかし、刑法犯として検挙された少年の数はいまや戦後最低の水準にあります(『犯罪白書』)。人口比という観点からみてもこれは同様です。殺人や強盗といった凶悪犯も減少傾向にあり、他の罪種も近年特に著しく増加したような傾向はありません。

少年非行をめぐる「(凶)悪化」の認識。それに対して、統計的には「改善」の傾向がみられること。このギャップはどこから生まれてくるのでしょうか。

いくつか考える道筋はあると思いますが、ここではごく単純に考えてみましょう。私たちは、少年によるものに限らず、犯罪や治安に関する情報をどこから得ているでしょうか。

少し前の調査ですが、内閣府が2004年と2006年に行った『治安に関する世論調査』では、「治安に関する情報」の入手先は「テレビ・ラジオ」がまず圧倒的にあり(2004年95.7%。2006年95.5%)、ついで「新聞」が続き(2004年80.1%、2006年81.1%)、大きく水をあけて「家族や友人との会話など」(2004年32.3%、2006年38.4%)、「インターネット」(2004年10.9%、2006年21.6%)と続いています。

現在ではインターネットの割合がより高くなってきていると考えられますが、大きな傾向はさほど変わらないのではないでしょうか。つまり私たちは、マスメディアからの情報を手がかりに、治安や犯罪についての認識を構成しているところが大きいと思われます。

だとすれば、先ほど述べたギャップの発生は、マスメディアの報道を分析していくことで明らかになる部分があるのではないでしょうか。ということで以下では、時代をさかのぼってみていくことのできる新聞の記事を素材にして、時代ごとの少年非行の論じられ方について調べ、ギャップの発生因を考えてみたいと思います。

次ページ 2500記事を分析してみると……
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