世界最強の権力者はこうして決まる 〜アメリカ大統領「選挙」のしくみ日本の選挙とはこんなに違う

2016年02月07日(日) 渡辺将人

渡辺将人賢者の知恵

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「州」という名の「国」ごとに民意を決める

アメリカは歴史的に13植民地が同時にイギリスと独立戦争をして、同時にそれぞれが独立した。連邦制は時系列的にそれ以後にできたものである。

連邦は対外的な関係などで便宜的に求められた。しかし、アイデンティティの原点はあくまで州単位である。だからUnited Statesであるし、The Statesと略すことも多い。「州の連合体」だ。

完全小選挙区制のアメリカでは、議員の忠誠の対象としての選挙区は、「州」という単位に収斂している。「党」ではない。

連邦議会の議場では、議員は政党名や会派ではなく「イリノイ州選出のジェントルマン(the gentleman from Illinois)」と州名を冠に付けて呼ばれる。

連邦上院議員は各州から2名。ハワイでも2名なら、カリフォルニアでも2名。人口の多い州ほど上院議員に会いにくく、そもそも一票の格差どころではないが、アメリカは成り立ちからして50の「国」の連合体であり、50州は平等なので異論は少ない。

州境を越えれば、民法も刑法も商法も選挙法も各州で違う。同じ犯罪でも死刑の有無も州次第で、ワシントン州とコロラド州のように大麻が合法な州もある。道交法も州によって異なり、州をまたいで引っ越すと免許を取得しなおさなければならない。実技は免除されても筆記を受け直すことが多い。筆者もイリノイ州シカゴからヴァージニア州北部に引っ越した際、ヴァージニアの筆記を試験場で受け直させられた。

投票権は18歳という印象があるが、実際は州によって違う。本選当日までに18歳になる17歳には予備選投票を認める州もあれば、党によっては不可だったり、大統領選挙のみ可能だったり、州別ルールは複雑だ。メリーランド州には市長選のみ16歳から投票できる地域もある。 

州ごとに法規が違うのだから、司法試験の受験資格も内容も州ごとに違う。多数の州の弁護士資格を取得しても登録費の支払いが無駄なだけで、実際に開業するいくつかの州だけに絞るのが普通だ。

だから日本人でアメリカの弁護士資格がある人も、ニューヨーク州弁護士等の肩書きで正確に名乗っている。日本の弁護士資格のような「アメリカ弁護士」なるものはないからだ。

いちいちその州に出向いて、その州のルールで司法試験を受ける。だから弁護士はバーイグザムに合格して開業している州の法律にしか詳しくない。アイオワの選挙法をカリフォルニア州の弁護士に聞いても無駄である。

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