大統領選 アメリカ
世界最強の権力者はこうして決まる
〜アメリカ大統領「選挙」のしくみ

日本の選挙とはこんなに違う
渡辺 将人 プロフィール

もちろん、無党派層は本選まで観客だが、実際にはアイオワのように当日登録を認める州も多く、トランプやサンダースのような候補が出ていれば、無党派層も予備選にどんどん参加する。実際、今回の当日登録者の多さは凄まじかった。

だから良くも悪くもポピュリズムがはびこる。保守系のティーパーティのように、政党主流の穏健な政策とそりが合わない過激な候補者が、地元民の支持があれば指名を取ることも可能だ。議会指導部も大統領も、誰もそれを阻止できない。

政党の「色」は、党幹部が決めるものではなく、支持者の手に委ねられている。だから有権者の多数派の思想傾向に従属して、政党の色彩も変容する。かつて保守的だった南部民主党が、1960年代に支持層が大挙して共和党に鞍替えしたために穏健化したのは象徴例だ。

「党員」という日本語も誤解の原因の1つかもしれない。

リパブリカン(Republican)、デモクラット(Democrat)というのは、共和党・民主党に前回選挙で登録した人のことを指し、「共和党支持者」程度の意味だ。日本語の「党員」とは乖離がある(party regularなどの表現がニュアンス上は近いが、それでも党費を払ったり、メンバーシップ制になっているわけではない)。

州別に順繰りで行う党員集会と予備選挙

本選投票は全米で同日に行われるが、党員集会、予備選は州別に順繰りで行う。スーパチューズデーのように複数州の同一投票日もあるが、緒戦はアイオワ(今年は2/1)、ニューハンプシャー(今年は2/9)など1州ごとだ。緒戦州には集中豪雨的に注目が集まり、報道のトーン、後続州の有権者の判断、候補者の撤退に影響を与える。

本選もまずは州ごとに勝敗を決め、その結果として州別に人口比で割り当てられた「選挙人」の合計で勝敗を決める。ほとんどの州で選挙人は勝者総取りなので、全米の総得票とは異なる。

どうして合衆国全体で一斉投票をしないで、州ごとにまず民意を析出するのか。アメリカは基本的に州が基本単位の国だからだ。

州は日本の都道府県と同じものでは断じて無い。たしかにアメリカの州と日本の都道府県は姉妹協定を結んでいる。しかし両者が似て非なるものであることを承知の上で戦略的に行っているか、多くは「美しき誤解」のもとに展開されている。アメリカ側は概ね後者だ。都道府県を州と勘違いしている。

だから日本の知事は、姉妹州を訪問すると思いがけない歓待を受けて驚かされることがある。

アメリカでは州は1つの「国」のようなもので、州知事はその長だから、とてつもない尊敬の対象だ。各州選出の連邦上院議員が辞職したり、死亡したり、急遽空席になった際、次回選挙までの議員を指名する権限もほとんどの州では州知事にある。だから州知事選びは、もしものときの連邦上院議員選出の判断も委ねる含意がある。