雑誌
富士通のドン危うし
解任された社長が明かす「陰謀」の数々

「社内に吹き荒れる独裁専制、
粛清人事を私は危惧する」
 まさに前代未聞。社長の立場にあった人物が「最高実力者」と公開で大ゲンカを始めた。名門企業は説明責任を回避。この一件、陰謀の匂いがする。

ドンがそこにいた

「最近では、私と少しでも関係のあった人を降格するというような粛清の人事が行われているとも聞いています。自由な言論が保障されている現代の日本において、人事権の名のもとに、独裁専制的なことがまさか起こっていないだろうな、と危惧しています。

 このような背景で今回の行動になったことを、ぜひご理解いただきたいと思います」

 昨年9月25日、突然社長辞任を要求された野副州旦(のぞえくにあき)氏(62歳)の爆弾告発によって、富士通の激震が続いている。

 4月7日には、ついに弁護士とともに会見し、会社側に二人の取締役を訴えるよう請求したことを明かした。

 野副氏は実名を明かさなかったが、ターゲットは、富士通の「ドン」と言われ、人事権を掌握していた元社長・秋草直之相談役(71歳)、そして野副氏の後任社長だった間塚道義会長(66歳)の二人である。

 野副氏は記者会見で冒頭のコメントを口にしたが、どういうわけか新聞・テレビではほとんど報じられることはなかった。

 野副氏は終始、意気軒昂だった。会見の帰り際、エレベーターに乗る直前に、

「社員からは、激励のメールも来ていますよ」

 と笑顔で話す余裕ぶり。

 この後、深夜10時に帰宅した野副氏に本誌は自宅前で直撃インタビューしているが、その内容は後述するとして、一連の経緯について振り返っておこう。

 '08年6月に社長に就任した野副氏は、苦境に陥っていた富士通の経営を立て直すため、矢継ぎ早に改革に着手。なかでももっとも大きな課題になっていたのが、子会社ニフティの売却問題である。

「富士通のドン」である秋草氏が執着していた傘下のインターネット・プロバイダ会社ニフティは、経営不振にあえいでいた。

 野副氏は社長就任早々、経営コンサルタントらと打ち合わせしニフティ売却案を練っていた。野副氏が模索していたこの売却スキームに、「反社会的勢力と関係がある人物がかかわっている」というのが、秋草氏らの言い分だった。

 秋草氏らは昨年9月25日早朝、取締役会前に野副氏を別室に呼び出した。口火を切ったのは、監査役だった。この人物は、法律の専門家でもある。

「これは客観的事実なんですが、警視庁情報で暴力団と(ニフティ売却のスキームに登場するファンドに)付き合いがある」

 などと迫った。さらに、

「警視庁筋に言わせると、××組との関係がある」

 と暴力団組織の実名まであげた。

 野副氏は目を剥いて驚いた。辞任要求には、はじめ抵抗したが、1時間弱の説得でついに同意し、辞任届に署名した。

 会社側は辞任の理由を「病気のため」と発表し、野副氏はそのまま東京・新宿のホテルに夜まで「軟禁」されたうえ、携帯電話などすべての持ち物も「没収」された。この携帯電話は、その後も電源がオンになっており、誰かが充電を続け、着信をチェックしている気配があった。

 いっぽう、退社した野副氏は、会社に言われたとおり形ばかりの通院を続けながら、復帰のタイミングをうかがっていた。

 12月に入ると、その野副氏のもとに、「役員と会ってくれ」という話が持ち込まれた。密かに指定された場所に行くと、そこにいたのは、なんと秋草氏以下数名の会社幹部だった。その場では、こういう話が出たという。

「3ヵ月で病気が治るのは、やはりおかしい。6ヵ月くらいする(時間がかかる)ものだ。4月から出社してください。(辞任から)3ヵ月で治って元気になったら、マスコミになにを書かれるか分からないでしょ。野副さんは仕事人間だから、出社したら人を呼んで(バリバリ)仕事をするんだろうな」

 それを聞いた野副氏が、

「いまの私には権限も責任もないのに、何ができるんですか」

 と反論すると、宥めるようにこう言った。

「呼ばなくても人が来るよ。社内には野副さんの再登板を待ち望むファンも多い。企業を守るためには、こういう意見(再登板待望)を潰す必要もあるんだ。広い心であと3ヵ月、自分を見つめ直す時間を持つことも大事だと思えないのか」

 秋草氏は、さらに続けた。

「あのまま状況が進んだら、将来大きな問題を引き起こしていた。それを未然に防いだということだ。会社にとっても、野副さんにとっても良かったと思っているよ」

 倒産しかねないと言われて

 秋草氏の発言とは裏腹に、野副氏は「この人は、俺を会社に戻す気はないな」とようやく直感したという。遅ればせながら、野副氏は'10年年明けから動きはじめた。

 弁護士の畑敬氏とタッグを組み、事実関係の解明に当たった。秋草氏らから「反社会的勢力とかかわりがある」とされたファンドのS社について、警視庁情報にあたり、大手証券会社に取材、さらにS社の経営者からも聞き取りをしたという。その結果、S社は暴力団とはかかわりがないことが判明した―。

 畑弁護士が、野副氏の代理人として、間塚会長に対し内容証明郵便を送ったのは、2月26日であった。今回の提訴要求は、その延長線上にある。

 野副氏本人に話を聞こう。

―昨年の9月25日、1時間足らずの「説得」で辞任を受け入れてしまったのはなぜなんでしょう。

野副 その場で(秋草氏らに)言われたことは、
「野副さんが付き合っている人は、反社会的勢力だ」
  ということです。それを何度も何度も、説明されたわけです。

―しかし、秋草氏らがその場で、はっきりした根拠を示したわけではなかったんですよね。

野副 だって、相手は、法のプロですよ。その人が、私が選んだ仕事相手が「反社会的勢力だ」と繰り返し、説明するんだから。

―穿った見方だが、野副さんにもやましい部分があったから、すんなり身を引いたとも取れるが。

野副 まったくない、まったくない。9月25日、あの場でああいう形で糾弾されたのは、「私自身が(反社会的勢力について)知らなかっただけなのかな」というふうに考えたということです。法の専門家から、
「(辞任しないと)会社が上場廃止になるんだ」
  とか、
「銀行から資金の投入を引き上げられるんだ」
「そうなると、倒産しかねないというような状況になる」
  と言われたときに、普通は・・・。
「社長としてとるべき責任だ」って法のプロから言われれば・・・。それを何度も説明されたわけですから。だから、私自身はやましい部分はいっさいないです。これ以上は、いまは話せませんが―。

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