黒田日銀の奮闘も虚しいほどに、世界経済の底なし沼化は進んでいる
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深刻な問題は、別のところにある

1月29日、日本銀行(黒田東彦総裁)が「マイナス金利政策」導入に踏み切った。この点についての大手メディア側の反応・評価を見る上で参考になるコラムが2つあった。

1つ目は、『朝日新聞』(2月3日付朝刊)の「経済気象台」(社外執筆者が無署名で書く)である。

「<前略>『デフレ脱却のためには何でもする』という総裁の言葉にウソはないことを世界中が確信した。海外投資家は、安倍政権がコーポレートガバナンスの強化を進めている点は評価している。ところが、『やはり日本は変わらない。国が圧力をかけ、ゾンビ企業を延命させる』という見方が広がり出した。<後略>」

世界の投資家が「黒田サプライズ」のマイナス金利導入を評価したとしても、そして「中央銀行の歴史上で最強の枠組み」(3日の黒田総裁講演)と自負しても、それは「世界的な金融市場の動揺に立ち向かうことは容易でないという現実を改めて印象づけている」と書いた2つ目の『日本経済新聞』(同4日付夕刊)の「日銀ウォッチ」(佐伯遼記者)はかなり厳しい評価である。

前者の『朝日』記事にある「ゾンビ企業」とは言うまでもなく、いま台湾の鴻海精密工業(郭台銘会長)の傘下に収まるのかどうかで注目を集めているシャープ(高橋興三社長)のことである。

政府系ファンドである産業革新機構(会長・志賀俊之元日産副会長)が示した支援計画(3000億円出資、シャープ現経営陣総退陣、主力銀行は事実上の債権放棄)と比べても、鴻海側のそれは、①7000億円拠出②現経営陣続投③主力銀行に負担を求めない―というものであり、当然ながらシャープ側は鴻海傘下入りを選択するはずだ。

従って、『朝日』コラムで指摘された海外投資家が不安材料として挙げる「日本は変わらない」の一例は排除できる。そしてそれは「経済政策の司令塔を務めていた甘利明・経済財政担当相の辞任で、アベノミクスの先行きに不安感が増大した」ことも一応解消できたことを意味する。

深刻な問題は別なところになる。黒田総裁が「越えることが不可能と思われていた『金利のゼロ制約』の壁は、日本銀行の知恵と実践の中で、乗り越えられようとしています。追加緩和の手段に限りはありません。中央銀行は今後とも、金融政策手段のイノベーションに取り組んで行きます」と言い切ったものの、その後、日経平均株価は続落し、5日の終値は1万6819円59銭で引けた。

たとえ黒田日銀が奮闘しても、現下の底なし沼状態の原油安(1バレル30ドル割れ)、中国経済減速・上海株安、新興資源国経済の失速(ロシアやブラジル)、米国経済の先行き不透明感など、まさに怒涛の世界的リスクオフ相場には太刀打ちできないのだ。

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