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切るべき者は容赦なく切る!菅官房長官「脅威の仕切り力」その秘密を探る

「安倍総理とぶつかることは、不思議とない」と菅は言う〔PHOTO〕gettyimages

ジャーナリスト 松田賢弥

こんなに早く辞めるとは—誰もがそう思った甘利の辞任。この「早期解決」のウラでうごめくのが官房長官・菅義偉である。官邸を意のままに操る「影の総理」の正体に、松田賢弥氏が迫る。

徹底した危機管理

「恥ずかしい事態を招いたことについて、閣僚としての責務、政治家としての矜持に鑑み、閣僚の職責を辞することにしました」

甘利明・経済再生担当大臣は1月28日、千葉県の建設会社からの不正献金疑惑を巡り、閣僚を辞任した。

その瞬間、言葉を詰まらせ、目に涙を浮かべた甘利の顔からは、閣僚を退くことへの悔しさが滲んでいたように映った。

旧態依然とした自民党のやり方であれば、重要閣僚がスキャンダルを犯した場合、秘書に責任を押しつけて、本人は大臣の座に居座るというケースが多かったように思う。

しかし、今回は違った。

徹底した危機管理、トラブルの芽を執念深く潰すという姿勢。こんな采配を振るえる存在は、一人の男のほかには思い浮かばない。官房長官の菅義偉である。

「2世議員で苦労知らずの甘利さんと叩き上げの菅さん、2人の来歴は正反対です。お互い考えが合わなくても仕方がない。菅さんが甘利さんに進退を迫ったのではないか」

すでに永田町界隈では、こんな揣摩臆測が流れている。表面上では淡々と振る舞い、その下で、夏の参院選を制すことなど実利を優先する菅が、甘利を見放す可能性は十分にあると考えられていたのだ。

甘利は第一次政権時代から安倍晋三総理を担いできた、安倍の盟友、最側近のひとりだ。だが、それでも菅が「甘利さんには退いてもらう」と言えば周囲はそれに従わざるを得ないだろう—それほどに政権にとって重要な位置にいる。

「軍師」「汚れ役」「政権の要」「影の総理」。

菅は永田町でこう形容される。24時間365日政権のことを考える並外れたエネルギー、官僚やマスコミを意のままに操る胆力の持ち主。政権延命のためなら冷徹に人を切ることも辞さない、したたかな現実主義者。

だが、その実像には謎がつきまとう。私は3年にわたって菅を追い、その正体にぎりぎりまで近づいてきた。

「大雪の中で育ったことが、俺に反骨精神を植えつけたのかな」

菅は郷里への思いを私にこう述懐したことがある。秋田県雄勝郡秋ノ宮村(現湯沢市秋ノ宮)。東京から新幹線などを乗り継いで約5時間、最寄り駅から車で15分ほどのところにある、人口1700人の村である。夏になると川に赤い斑点のイワナが泳ぐ、のどかな農村風景だが、冬の季節にはそれが一変、2~3mの雪が積もる日本有数の豪雪地帯である。

戦後、満州から命からがら引き揚げ、農業を営んできた両親のもとに育った。まわりの多くの貧しい農家が出稼ぎに都会へ行く中、菅の父はイチゴ栽培組合を立ち上げたものの、ほかの家と比べても決して生活が楽なわけではなかった。

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