賢者の知恵
2016年02月09日(火) 週刊現代

家政婦が実の娘に勝った!
資産家夫人の遺産3000万円を巡る「わが抗争」

週刊現代
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〔PHOTO〕gettyimages

資産家の娘vs.家政婦—遺産を巡る異例の裁判が行われた。40年以上にわたって資産家女性に仕えてきた家政婦は、どうして娘たちに勝つことができたのか。注目を集めた裁判の詳報をお伝えする。

「華麗なる一族」の中で

「もう、裁判の件は、思い出すだけでもひどいことでして……。いまもすごく大変で、自分の生活を営んでいくので精いっぱいです」

東京から列車で約6時間。灰色の空の下、寒風が吹きすさび、日陰には雪が残る岩手県の海辺の町。人通りもまばらな通りの一角に、木造一階建ての小さな家がある。現在、この家に暮らしている元家政婦の石原寛子さん(仮名・68歳)は、本誌にこう語った。

実はこの石原さんは、今年の1月18日に、ある画期的な判決が下された裁判の原告だ。

長年、自身が仕えてきた資産家女性の遺産相続を巡り、実の娘たちと争ったのである。結果は、石原さんの勝訴。彼女は、女性の遺産約3000万円を娘たちから勝ち取った。

石原さんの「わが抗争」の背景には、彼女が一生を捧げた資産家一族の栄枯盛衰と、それに絡む骨肉の愛憎劇がある。

その遺産が争われた、資産家の女性・吉岡初子さんの一家は、映画界で名を知られた一族だ。

初子さんの父、吉岡重三郎氏は、映画会社・東宝の元社長。阪急電鉄や東宝の創業者・小林一三の秘書や、宝塚の理事を務めていたこともある。さらに、初子さんの夫、定美さんは映画館の運営などを行う東京テアトルの社長、会長を務めた人物である。

'47年生まれの石原さんは'60年、漁業をやっていた岩手県の実家を離れ、集団就職で上京する。そして、14歳の頃から、重三郎氏、初子さん、定美さんの暮らす家で家政婦を始めた。

地方生まれの石原さんにとって、東京・山の手の資産家の屋敷は広くきらびやかで、さぞ輝いて見えたことだろう。初子さんの知人が言う。

「重三郎さんが亡くなってからも、石原さんは東京・港区にある大きなマンションで初子さん夫婦に仕えていました。とくに定美さんは彼女を『ヒロちゃん』と呼び、『ヒロちゃんは料理も上手だし、自分たちが死んでも困らないように、店を出せるくらいの財産は遺してあげるから』と可愛がっていました」

だが'84年に、石原さんを可愛がっていた定美さんが亡くなってしまう。それでも彼女は、夫人の初子さんや娘たちに、家政婦として仕え続けた。

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