星の王子さまは「モラハラ」で殺された!?

この世界の恐ろしい秘密が明かされる
安冨 歩

子どものはずの王子が「あまりに若くて」と言うのは、どう考えても変である。このことから、この物語が子ども向けのメルヘンのフリをして、実際には大人の男女のドロドロ関係を描いていることが明らかである。

このバラとの確執が、子どもに対して与える教訓はなんだろうか。それは、大人になって結婚なんかすると、往々にしてこういうひどい目にあって、家をとられて、自分はホームレスになって放浪する羽目になる、ということである。そしてさらに、もしかすると自分の両親の関係もまた、実のところこういうドロドロなのではないのか、という考えが子どもの脳裏をよぎってもおかしくはない。

どうしてこんな危険な本を、大人は身銭を切って、せっせと子どもに与えるのであろうか。

世界との関係が切れている大人たち

さて、王子は自分の星を捨てて、さまざまの小惑星を巡る。そこには頭のおかしい大人たちが住んでいる。王様、うぬぼれ屋、呑みすけ、ビジネスマン、点灯夫、地理学者と王子は出会う。彼らの共通点は、世界との関係が切れていることである。

映画『リトルプリンス』HPより

王様は、勝手に起きるに決まっていることだけを命令し、自分の命令が貫徹されていることに満足する。

うぬぼれ屋は、自分一人しかいない星で、自分が星一番カッコいいことに自惚れている。

呑みすけは、酒を呑むのが恥ずかしくて、それをごまかすために酒を飲む。ビジネスマンは星という星を勝手に所有しているつもりになり、一生懸命にその数を数えている。

点灯夫だけは、街灯をつけたり消したりするという仕事をしていて、少しだけ世界と関わっているが、星の自転が早くなりすぎて、一分毎につけたり消したりするので、これまた無意味になっている。

地理学者は、冒険家が見てきたものを聞き取って記録するだけで、自分では何もしない。

物語のなかの大人たちは、世界との関係が切れているというのに、世界を動かす大切な仕事に忙殺されているつもりになっている。それは、あなたのまわりの大人も同じなのだ。

これがサン=テグジュペリが子供に伝えようとした大事なメッセージである。成長するとそのような狂った世界で暮らさねばならない、いや、生まれた時からそのような世界に投げ込まれているのだ、という恐ろしいメッセージをサン=テグジュペリは伝えようとしている。

「自分が悪い」と思い込まされるハラスメント被害者

ここで地理学者は王子に余計なことを言う。王子が自分の星には花がある、と申告すると、そんなものははかないから記録しない、と言い放つのである。

はかない、という言葉が、弱いからそのうち消えてなくなる、というような意味だと言われて、王子は、はかないバラを置いて星を出たことを後悔しはじめるのである。

地理学者の勧めで王子は地球に向かう。そこでショックなことが起きる。ある庭に迷い込んだらそこに五千本もバラが咲いていたのである。王子の星のバラは、自分は宇宙でたった一本の貴重なバラなんだ、と言っていたのだが、それが嘘であることが明らかとなった。