大統領選 アメリカ

アメリカ人にとって「大統領」とはいかなる存在か? トランプ旋風の行方を考える

大統領選、いよいよ幕開け!
渡辺 将人 プロフィール

経済、国際情勢で喫緊の課題が山積している中、大統領選挙でなぜ人工妊娠中絶への是非のような内向きのテーマが争点になっているのかは常に疑問視される。

しかし、政策手腕ではなく、アメリカの文化的象徴を体現する人間(そしてその配偶者と家族)を判定している選挙である以上は、価値問題、文化争点は「本丸」にならざるを得ない。

大統領には最高裁判事の指名権が与えられている。同性婚から人工妊娠中絶まで判断する最高裁判事への間接投票がアメリカの大統領選挙であり、候補者の信仰や思想が吟味される。

ちなみに次の大統領は任期中に2人程の最高裁判事を新たに指名する可能性があるとされている。だからこそ宗教保守票が一定の活性化の兆しを見せているし、他方で憲法学者でもあるオバマを最高裁判事に指名する意志をヒラリーが示したことが米メディアの関心を呼んでいる。

公職経験の無い大統領があり得るのか

そこで生じるクエスチョンは、トランプが公職経験も軍の英雄でもないことだ。アメリカ大統領史上、知事、議員、副大統領などの公職を経験していない大統領はアイゼンハワーまで遡らないと存在しないが、アイゼンハワーは軍人だった。軍の高位も公職にカウントすると、その経験もない大統領は珍しい。

映画俳優のレーガンも、ビジネスマンのジョージ・W・ブッシュも、州知事を経ている。指名獲得のみならば、1940年共和党大統領候補に選ばれた弁護士のウェンデル・ウィルキーに遡るが、彼も大統領にはなれなかった。

経営者が大統領になれば合衆国史上の「事件」である。玄人筋が「トランプ大統領はない」と言い続けていたのは、国民の大統領像が急変していないはずとの読みにも基づいている。

ニュージャージー州知事のクリスティなどはハリケーン・サンディへの災害対応などを自慢し、公職で人命に責任を持って指導力を発揮したことがない人間はダメだとトランプを批判している。ただ、新しいアメリカ大統領像は有権者が決めることだ。

最近の大統領資質の修正例としては、オバマの「軍役経験」欠如がある。州軍を含め何らかの軍役経験が、最高司令官になるのは必要だとされてきた。だからこそ、1992年選挙のビル・クリントンの徴兵回避疑惑は叩かれた。

しかし、2008年にはオバマの軍役経験の無さは、欠点にならなかった。軍トップでもあったコリン・パウエル元国務長官がオバマを支持した際、軍役経験を無理に求める時代ではないとお墨付きを与えたのだ。