大統領選 アメリカ

アメリカ人にとって「大統領」とはいかなる存在か? トランプ旋風の行方を考える

大統領選、いよいよ幕開け!
渡辺 将人 プロフィール

文化的な象徴としてのアメリカ大統領

トランプと重複する「枠」の候補者がいないわけではない。「非政治家枠」のフィオリーナとカーソンだ。

ベン・カーソン候補〔photo〕gettyimages

「私は政治家じゃないので本当のことを言います。政治家は(財政について)普通は言いません」「昨夜の討論会で政治家の肩書きがないのは私だけでした」と脳外科医のベン・カーソンは観客の笑いをとるとき、必ず政治家批判を織り交ぜる。

「私は雇用を生んできました。ヒラリーは雇用を潰してきました」「偽資本主義者、社会主義者、職業政治家を当選させてはなりません」と、元ヒューレット・パッカードCEOのフィオリーナも「非政治家」を強調する。

フィオリーナ候補〔photo〕gettyimages

ただ、経歴的に「非政治家」なだけで、フィオリーナはビジネス系エスタブリッシュメント、カーソンは宗教保守に近い。結果として2勢力の票を侵食し、トランプ票を奪えていない。

アメリカ人はそもそも「非政治家」を本当に大統領に望んでいるのだろうか。

アメリカ大統領はイギリスの国王と首相を合わせたような存在に近い。実務能力や政策理解以前に、同時代の国民の統合的シンボルとして、国民が納得できる「象徴性」が条件になる。

アメリカの文化を体現する存在として、信仰・物語・家族などを総合して「ファースト・ファミリー」を決める。したがって、有権者も議会選挙とは違う基準で投票する。国民投票で「国王」を4年ごとに決めているような色彩がある。

ジーンズの似合うカウボーイの「おやじ」らしさは魅力だ。アイビーリーグなど名門卒であることは、歴史の浅いアメリカでは数少ない「毛並み」の象徴として効果的だが、フットボールで活躍したり、元映画俳優だったり「英雄」であることのほうが重要だ。独身者や子供がいない人は選ばれにくく、大家族であるほど好感を持たれる。

オバマ以前は白人男性しか当選しなかった。しかし、ヒスパニック系やアジア系など非白人の大統領は遅かれ早かれ誕生するだろう。アメリカの文化をめぐる本当の「壁」は人種ではない。信仰である。

黒人大統領以上に誕生困難なのは、非キリスト教の大統領である。実際、ユダヤ教徒大統領すらまだ出ていない。イスラム教、仏教、無神論者などの大統領を国の象徴として許容する見通しはない。

例えば、オバマを当選可能とさせたのは、母方の白人家庭で育てられた「脱人種」背景もあったが、決め手はキリスト教だった。信仰を疑われていたオバマにとって、シカゴ南部の貧困街の黒人教会やカトリック教会でのコミュニティ活動は「オバマはクリスチャン」に説得力を持たせた。