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日銀・黒田総裁が温存する「最後のカード」~デフレ脱却の「壮大な実験」、いよいよ最終局面へ

小野 展克 プロフィール

いよいよ最終局面を迎える

既に、日銀が保有する日本国債は300兆円を超え、市場に流通する国債のうち、約3割を占める。仮に国債の買い入れ額を100兆円に増やせば、新たに発行される国債の大半を日銀が吸い上げてしまうことになる。

その点を踏まえると100兆円への拡大は、量的には最後の一手となる可能性が高い。今回、マイナス金利と100兆円の国債購入をセットで打ち出した結果、市場の動揺が収まらなかった場合、日銀の政策手段が手詰まりになるリスクにさらされたのもまた事実だろう。

黒田は、マイナス金利の効果を見極めたかったのか、それとも最後の一手を温存したのか――。

今回の金融政策決定会合の採決は賛成5、反対4の薄氷の決定だった。そもそも異次元緩和に否定的な姿勢の木内審議委員、佐藤審議委員、石田審議委員に加えて、今回は黒田の考えに比較的近いとみられている白井審議委員も反対に回った。

ただ白井の反対理由は「マイナス金利の導入は資産買入れの限界と誤解されるおそれがある」というものだ。白井の反対理由は、むしろ100兆円の国債購入への道を開いているようにも読める。このあたりに、黒田の次の一手へのヒントが垣間見えているのかも知れない。

黒田のデフレ脱却への壮大な実験は、市場との激しい攻防を経て、いよいよ最終局面を迎える。

おの・のぶかつ 1965年北海道生まれ。慶應義塾大学文学部社会学専攻卒業。嘉悦大学ビジネス創造学部教授、経済ジャーナリスト。共同通信社入社後、経 済産業省キャップ、 日本銀行キャップ、編集局経済部次長などを経て、現職。新著に『黒田日銀 最後の賭け』がある。小野一起のペンネームで小説『マネー喰い』(文春文庫)も 執筆