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年俸1億円以上の役員が23人!
三菱電機「絶好調」の理由は「撤退する勇気」

目立たないけど給料も業績もすごい
最近は空調事業を主力に据えるため、海外企業の買収も実施〔PHOTO〕gettyimages

「選択と集中」「技術革新」と連呼して思考停止に陥り、日本の電機メーカーは次々に倒れていった。だがこの会社だけは、本当に大事なことを知っていた。ただ攻めるばかりが経営ではないのだ。

完全に一人勝ち

「業界の内部では、野武士の日立、商人の松下に対して、三菱はあまり闘争心のない『殿様』と長年揶揄されてきました。売り上げも総合電機メーカー3社の中では『万年3番手』と言われ、ずっとパッとしなかった。

ですが現在の好調は、そうした社風がいい方向にうまく働いている結果なのだと思います。

三菱電機には、『1位を目指さなければならない』という気負いや、『寝食を犠牲にして働く』という必死さが薄い。だからこそ、必要なときに大きな改革に踏み切り、正しい戦略を立てることができた。『プライドよりも生き残ることが大切』と割り切れることが、彼らの強みでしょう」

こう語るのは、東京大学大学院「ものづくり経営研究センター」特任研究員の吉川良三氏だ。

トップランナーの一角・東芝の不正会計問題発覚、死に体となったシャープの身売り・延命問題など、激震が続いている電気機器業界。しかし、混乱を横目に「われ関せず」とばかりに売上高を伸ばし、絶好調を謳歌する企業がある。それが三菱電機である。

2016年度の売上高予想は、過去最高の4兆3800億円。たった3年前の'13年度に4兆円を超えたばかりにもかかわらず、驚異的な伸びだ。営業利益率も約7%と、電機業界でトップを走っている。まさに一人勝ちである。

さらに、すべての幹部が報酬の一部を返上し、一般社員まで給料カットの憂き目に遭った東芝とは対照的に、三菱電機の「破格の役員報酬」は、サラリーマンの羨望の的となっている。

現社長・柵山正樹氏の2億6000万円を皮切りに、役員23人全員の報酬が1億円越え。右の表に、各人の実際の報酬額と氏名・肩書を一覧にして掲載した。

また従業員の平均年収も、800万円弱と高給だ。昨年度の決算でようやく黒字回復した、ソニー社員の平均年収が900万円近いことを考えると、三菱電機の社員はもっと貰ってもいいくらいだ。

「地味な三菱電機が、なぜそんなに儲かっているのか」と疑問に思う向きもあるだろう。たしかに、ソニーや日立、東芝、パナソニックといった他の電機メーカーと比べると、三菱電機の存在感は薄い。代表的な製品は、エアコンの「霧ヶ峰」シリーズや冷蔵庫くらいしか思い浮かばない、CMの内容も「ニクイねぇ!三菱」のキャッチフレーズしか記憶に残っていない、という人が多いのではなかろうか。

だが実は、この「地味さ」こそが、三菱電機の強さの秘訣なのである。

前出の吉川氏は日立製作所や日本鋼管、韓国サムスン電子で長年技術者として働き、サムスンでは常務まで務めた。氏は2代前の下村節宏社長時代、乞われて三菱電機の役員会で提言をしたことがあるという。

「私はそのとき、サムスンが家電事業に集中的に設備投資していることを踏まえて、『家電は激戦になる。撤退を進めるべきだ』と提案しました。

当時の電機業界にはまだ、『日本が韓国なんかに負けるわけがない』と考えている人もたくさんいましたが、三菱電機の幹部は私の話を真剣に聞いてくれた。このとき役員だった、前社長の山西健一郎さんと、現社長の柵山さんが、数年後にその提案を実行したのです。

その後、家電市場は海外メーカーが席巻し、三菱電機以外の日本勢は案の定、苦戦を強いられることになりました。私の発言で撤退を決めたとは思いませんが、少なくとも三菱電機の経営陣に、『勝てない』と見た分野からはためらわず退く決断力があることは間違いありません」

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