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ブーム到来!埼玉県民の「自虐とプライド」が日本中で密かに愛されている
ギャク漫画が火付け役
高層ビルの向こうに広がる風景(Getty Images)

高層ビルの向こうにはすぐ田んぼ、でも池袋まで25分で行ける。川越、秩父に草加せんべい、あとは何かあったっけ? 都会と田舎に挟まれ、彼らは何を想うのか—おかしくも哀しい心の中を探る。

茨城とは器が違う

『翔んで埼玉』はテレビでも紹介された。実は未完の作品

生まれも育ちも埼玉は大宮、40代男性が言う。

「高校生の頃、東京の同級生と初めて新宿で遊んだ時、『はるばる埼玉からよく来たな』とバカにされて、ケンカになりました。埼玉をバカにされるのって、顔や身長と同じで、自分じゃどうしようもないじゃないですか。だから悲しかったし、頭に来た。今となってはどうでもいいけどね。

親に『どうして埼玉なんだよ!』って噛みついたこともありました。いや、いいところなんですよ、埼玉は。空が広いよ。埼玉県民だから得した経験は、特にないけど……東京に近いことくらいかなあ。というか埼玉は、ほぼ東京でしょ?」

いまひそかに「埼玉」がブームになっているのを、ご存知だろうか。

ただし、「みんなの憧れの的になっている」というわけではない。埼玉県民の自虐ネタと、ヘンなプライドのせめぎ合いが、面白がられているのだ。

火付け役となったのは、話題のこんなギャグ漫画である。

舞台は、とある架空の国。そこでは「東京都民」と「埼玉県民」の間に、圧倒的な身分の差があった。埼玉県民が東京へ行くには通行手形が必要で、運よく都内に入れても、高級百貨店などをうろつけば「埼玉狩り」に遭い、強制送還されてしまう。

当然、東京の学校では、埼玉県出身家庭の子供は激しい差別に遭っている。腹痛を起こした「元埼玉県民」の生徒に、無情な言葉が投げかけられる。

「そこらへんの草でも食わせておけ!」(注・これはギャグです)

東京都民にゴミのように扱われ、搾取される埼玉県民。所沢出身の主人公・麗は東京の名門学園に転校し、本当の身分を隠しながら、「埼玉解放」のための果てなき戦いに身を投じてゆく—。

これが'82年から'83年まで執筆された『翔んで埼玉』のあらましだ。作者は、ギャグ漫画の金字塔『パタリロ!』でも知られる魔夜峰央氏。本作は30年あまりの時を超えて昨年12月に復刊され、なんと30万部超のベストセラーとなっている。「ひどい言い草だけど、面白い」と大ウケなのだ。