大阿闍梨を待ち受けたさらなる試練「断食、断水、不眠、不臥を9日間続ける『四無行』は、一歩間違えば確実に死です」

島地勝彦×塩沼亮潤 【第4回】
島地 勝彦 プロフィール
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シマジ わたしにはとても無理です。おしっこは出るんですか?

塩沼 はい。人間の体は凄いなあと思いました。水を一滴も飲まないのにお小水は朝晩必ず出るんです。

シマジ 水分は出ていく一方なんですね。つまり確実に死に向かっているわけですか。

塩沼 四無行では中日(なかび)といいまして、5日目からは天目茶碗に水を注がれ、それでうがいをすることが許されます。しかし飲んではいけません。同じ大きさの天目茶碗が隣に置いてあって、そこに同じ量の水を吐いて戻さなければいけないのです。

はじめてうがいをした瞬間、口のなかの粘膜からチュルチュルという音がしたように感じました。そのころは全身の感覚が研ぎ澄まされて、線香の灰が落ちる音さえ聞こえました。

シマジ 極限状態なんですね。そしてついに9日間の四無行も満行されたわけですよね。

塩沼 はい。お堂の扉を開けて、急な階段を1人で歩いて外に出ました。そこには仙台からきてくださった方たちやお山の人たちが何100人も集まっていてくれました。真夜中のことです。わたしは杖を右手に持ってみなさんの前に出ました。あとは籠に乗せられて自坊に帰るだけでした。

ヒノ わずか9日間とはいえ、千日回峰行にも引けを取らない苦行ですね。

シマジ 大阿闍梨、お願いがあります。その神々しい手をわたしの頭に置いていただけませんか。

立木 シマジ、お前はなにを考えているんだ。そんなことをしたってお前の汚れきった体もこころも清くはならないの。

シマジ いやいや、大阿闍梨さまの強力な法力で体が浄化される気がします。今日は本当にありがとうございました。

〈了〉

 

塩沼亮潤 (しおぬま・りょうじゅん) 大峯千日回峰行大行満大阿闍梨 1968年、宮城県仙台市生まれ。東北高校卒業後、87年に奈良県吉野の金峯山寺で出家得度。91年、大峯百日回峰行満行。99年には金峯山寺1300年の歴史で2人目となる大峯千日回峰行満行。2000年、四無行満行。06年、八千枚大護摩供満行。現在は、故郷仙台市秋保に慈眼寺を開山し、住職を務める。おもな著書に、『人生生涯小僧のこころ』『人生の歩き方』『毎日が小さな修行』(以上、致知出版社)、『心を込めて生きる』『執らわれない心』(以上、PHP研究所)、『〈修験〉のこころ』(共著、春秋社)などがある。
島地勝彦 (しまじ・かつひこ) 1941年、東京都生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。『週刊プレイボーイ』『PLAYBOY』『Bart』の編集長を歴任した。現在は、コラムニスト兼バーマンとして活躍中。『甘い生活』『乗り移り人生相談』『知る悲しみ』(いずれも講談社)『バーカウンターは人生の勉強机である』(阪急コミュニケーションズ)『お洒落極道』(小学館)など著書多数。Webで「乗り移り人生相談」「Treatment & Grooming At Shimaji Salon」「Nespresso Break Time @Cafe de Shimaji」を連載中。最新刊『蘇生版 水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』が好評発売中!

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