「いつ恋」を見逃すな!この現代版”東京ラブストーリー”はドラマ史に残る名作かもしれない

フジテレビ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』HPより

坂元裕二の現代版"東京ラブストーリー"

坂元裕二氏(48)の脚本によるフジテレビの新しい月9『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(月曜午後9時)が18日にスタートした。運命的に出会った男女の恋物語で、主演は有村架純(22)と高良健吾(28)である。

最近の坂元作品は、爆発的な高視聴率を獲るわけではない。だが、どの作品も見る側の胸を揺さぶる。放送終了後も長く記憶に残る。たぶん、本人も視聴率より質を優先させているのだろう。大御所の倉本聰氏(81)や山田太一氏(81)と同じ系譜の人だと思っている。

もともと凡作を書かない人だが、特に今回の作品は出色。初回の段階では1月期のマイベストである。物語そのものに訴求力があるだけでなく、構成面でも極めて高い技量も見せつけた。

初回で描かれたのは、有村扮する「杉原音」と高良による「曽田練」が出会う数日間が大半。だが、そこに2人の現在の暮らしと生い立ちを綴れ織りのように精緻に交錯させることによって、両主人公の人間性を余すところなく浮き彫りにした。

連ドラの初回が登場人物の紹介と状況説明に終始してしまいがちなのは御存じの通り。だが、この作品はまるで違った。どのセリフにも深い意味を感じ、すべての場面に理由があるように見えた。もちろん、ドラマ性にも富んでおり、引き寄せられた。クスリと笑えるセリフもあった一方、目頭が熱くなる場面も含まれていた。多面体の宝石のようだった。

坂元氏の出世作は91年の大ヒット作『東京ラブストーリー』で、やはり月9だったが、柴門ふみさん(59)の同名漫画が原作。純然たる坂元作品ではない。今回の作品こそ坂元氏オリジナルの“東京ラブストーリー”である。初回の場景は大半が杉原音の暮らしていた北海道だったが、2話以降の舞台は東京に移る。

バブル期の終わりに制作された『東京――』には華やかな香りが漂い、登場人物たちの悲恋もどこか甘美だったが、このドラマの味わいは随分と異なる。痛々しいほど慎ましい空気感に満ち、生きることの難しさや辛さを感じさせた。たぶん、恋も苦いものになるのだろう。

柴門さんの漫画を原作とするドラマはヒット作が数多いが、良くも悪くも昭和の価値観に満ちていた。漫画も小説も作家の生きた時代が投影されるので、ごく自然なことである。

坂元氏は高度成長期に青春期を過ごした柴門さんより11歳年下。当然、異なる時代観がある。視点や心的傾向は最初から違う。坂元氏が現代の東京での恋をどう切り取り、描くのか。興味が尽きない。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら