欧州ではシートベルト着用を確認しなければ、バスは出発しない
なかなか改善されない日本の「安全軽視」
〔PHOTO〕gettyimages

事故の全容と背景を明らかにしたい

1月15日、軽井沢で悲惨なバス転落事故が起こり、15名が亡くなった。とくに若い学生たちの輝かしい未来が一瞬のうちに奪われたことは痛恨の極みである。徹底した原因究明がなされ、このような事故が二度と起きないようにしなければならない。

東京都は、関連する四つの旅行業者に対して、安全確保が適切に行われていたかどうかの検査を実施しているところである。国土交通省の検査や警察の捜査なども総合して、事故の全容と背景を明らかにしていきたい。

国は、全国の都道府県に対して、バス旅行を行っている業者に立ち入り検査を実施するよう求める意向である。そこで、その要請に応えるべく、都は産業労働局内に旅行業検査担当課を作り、体制を整える。東京都知事登録業者の数は1,996にものぼるので、どのように検査を実施するかについては、国交省とも調整しながら早急に決めたいと考えている。

さらには、シートベルトの着用を徹底するよう、東京バス協会や関東運輸局などをメンバーとする首都交通対策協議会を通じて、知事名で通知した。シートベルトをきちんと使っていれば、尊い命を救うことができたかもしれないからである。

ヨーロッパでは、バスに乗ると必ず、シートベルトを着用するよう乗務員から厳しい指示が出る。これは法律によって定められているからであり、着用を確認してからでなければバスは出発しない。

ところが、日本の場合、観光バスで遠出するときでも、そのような指示はない。罰則も含め、これを欧州並みに厳しくすることを真剣に考えるべきであろう。

日本におけるシートベルト着用状況を調べてみると(平成27年10月 警察庁・JAF合同調査)、着用率は、運転席・助手席については、一般道・高速道路ともに90%以上である。しかし、後部座席となると、一般道で35.1%、高速道路で71.3%である。

とくに、東京都のみに限っていえば、一般道28.8%、高速道路66.0%と、全国平均よりも低い。全席のシートベルト着用は、平成20年から義務化されているが、後部座席の着用率は、このように低いのが現状だ。

まずはこの比率を高める努力が展開されねばならない。バスの座席ベルトについては設置することが規定されているが、いわゆる路線バスについては、そのかぎりではない。

また、今回の事故の背景として、「規制緩和」の行き過ぎが指摘されている。安全については、適切なルールが必要であり、自由な競争にのみに任せてよいわけではない。しかし、消費者の利便性という視点からは、規制緩和のメリットもまた正当に指摘されねばならない。

たとえば、大田区が先行的に取り組んでいる国家戦略特区の旅館業法の特例についてもまた、同様な賛否両論があろう。近隣住民対策やテロ対策について必要な措置を講じながら、前に進めていかなければならない。

いずれにしても、規制緩和については、一般論ではなく、個々の事例に則してプラスマイナスを考慮し、国民にとって最適の解が出るように議論を深める必要がある。

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