雑誌 ドクターZ
省庁地方移転は「格落ち」なのか?
東京勤務にこだわる長官たちのホンネ

〔PHOTO〕gettyimages

政府機関の地方移転をめぐり、省庁間で「温度差」が広がっている。

省庁の移転は、安倍政権が進める「地方創生」の目玉の一つ。政府は7つの中央省庁を地方へ移転させる方針だ。

だが現状、移転に前向きなのは文科省の文化庁と、内閣府の消費者庁のみ。文化庁は京都へ、消費者庁は徳島へと移転する見込みだが、その他の省庁は移転に反対している。特に経産省の中小企業庁は強硬だ。

なぜ、これほどの温度差があるのか。反対派の省庁は「東京にないと機能しない」と主張しているが、本当だろうか。

名前が挙がっている文化庁、消費者庁、中小企業庁は、行政では「外局」と呼ばれる機関だ。外局にはその他に、経産省の資源エネルギー庁、財務省の国税庁、総務省の消防庁、農水省の林野庁、国交省の海上保安庁などがある。

外局は、府省のもとに「特殊な事務」、「独立性の強い事務」を行うために設置された機関と定義されている。そのため、同じ「庁」という名前がついていても、宮内庁、復興庁、警視庁などは外局とは言わない。

本来、その仕事の性質上、外局は地方移転になじむ組織である。「独立した事務」であるのだから、東京になくとも問題はないのだ。にもかかわらず、中小企業庁などが移転に反対するのは、外局と本省の「距離感」による。

距離感が近いかどうかは、外局の長である長官の出身元を見ればわかる。多くの長官が本省から出ていれば「近く」、外部から出ていれば「遠い」ということだ。

「地方は格下」という感覚が蔓延している

文化庁の場合、'00年以降の長官は7名。そのうち文科省出身は3名で、残り4名は外部からの登用である。消費者庁は'09年の創設以来、長官は4名いるが、そのうち2名が旧建設省と文科省出身。残り2名は外部からである。

では、中小企業庁はどうか。'00年以降の長官は9名いるが、すべて経産省からの昇格だ。これらの人事を見れば、文化庁と消費者庁は本省から遠く、中小企業庁は本省から近いということがわかるだろう。

この距離感がそのまま、地方移転に対する姿勢に現れている。

事務次官までは届かなかったが、長官はその省でナンバー2かナンバー3のポストだ。ほとんどの長官が、「せめて退官する場所だけは事務次官と同じ東京で」という思いを強く持っている。彼らは、移転して所在地が東京以外になると、退官時に格落ちのイメージになると考えているのだ。

この「移転が格落ち」という意識は、長官だけではなく、職員にも共通している。この感覚は、民間会社において、本社に比べ支店が格下であると感じるのに似ている。

一方、本省と距離感の遠い外局では、ポストを外部者に渡していることもあって、勤務地にそれほどこだわりはない。だからこそ、移転に対しても積極的なのだ。

前述した経産省の資源エネルギー庁、財務省の国税庁、総務省の消防庁、農水省の林野庁、国交省の海上保安庁も、本省と距離感の近い外局だ。東京という所在地を強く意識している。これらをすべて政治主導で地方移転させられれば、中央官庁における「地方軽視」の感覚は薄まり、役所効率は高まるだろう。

『週刊現代』2016年2月6日号より

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