辺野古移設反対派を圧倒した、安倍官邸の狡猾な「争点隠し」と「物量作戦」

【PHOTO】gettyimages

とても静かな選挙だった

どちらの陣営にとっても落とすことのできない勝負だった。しかし、惜しむことなく人と知恵を宜野湾に投入した、安倍自民と公明党の与党タッグに軍配が上がった。「絶対に勝たねばならない」という気迫の差が、勝敗を分けたというべきだろう。

1月24日、安倍政権と翁長雄志・沖縄県知事の「代理戦争」と目された宜野湾市長選挙が投開票され、現職の佐喜真淳氏(51歳、無所属、自民・公明推薦)が、志村恵一郎氏(63歳、無所属)を約六千票の差で制した。

今回の宜野湾市長選に各メディアが注目したのは、そこに「世界一危険」といわれる米軍普天間飛行場が存在するからであり、目下、安倍政権と翁長知事が対立している普天間飛行場の辺野古移設問題に、選挙結果が直結するからだ。

しかしながら、現地を取材してみると、マスコミが期待するような激しい舌戦を両候補者がくりひろげたわけではなかった。警備を担当したある捜査関係者は「とても静かな選挙だった」と振り返る。この静けさの実態を、1月17日付の沖縄タイムス社説『争点がはっきりしない』が突いている。

両候補者の違いが分かりにくいと指摘した上で、<決定的な違いは、志村氏が新基地建設に反対する姿勢を鮮明に打ち出しているのに対し、佐喜真氏は「辺野古」の賛否に触れていないことだ。「辺野古」を争点化しないという佐喜真陣営の選挙戦術は徹底している>とし、<わかりにくい選挙である>と釘を刺した。

実のところ、この「わかりにくさ」を演出し、選挙戦を静かにのりきることこそが、官邸・自民党の戦略だったのだ。指揮をとったのは官邸の菅義偉官房長官であり、自民党の茂木敏充選対委員長である。

1月12日、宜野湾市内でぶら下がり取材を受けた茂木氏は、ある記者から「(自民党推薦の)佐喜真さんは辺野古移設について明確な態度をとっていない。自民党としては、辺野古移設の是非は争点になるのか」と問われて、「これは宜野湾の市長選です。宜野湾の市民のみなさんにとっては確実な基地の返還、これが大きな課題」と返した。

市民の安全を脅かす普天間飛行場の固定化はあってはならない。しかし、名護市辺野古への移設については「宜野湾市の市長選なのだから」と明言を避ける――。細い糸の上をバランスをとりながら歩くような名答に、してやられた市民は決して少なくないはずだ。筆者は選挙戦の終盤、「え? 佐喜真さんは辺野古移設に賛成の人なの?」と驚く市民の声をいくつも聞いている。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら